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慶州:韓国松
(Korean Pinetrees, Kyonju)
pinetree
 千年もの間栄えていた新羅の王都、慶州は、飛鳥や奈良とどこかしら似ている。これは大正時代以降、繰り返されてきた言葉だ。果たして本当にそうであろうか。
 私は、駅前に並ぶ貸自転車屋で頑丈そうな日本製のマウンテンバイクを借り、遺跡巡りに繰り出した。大陸の空気が乾いているせいなのだろうか。5月だというのに、強い日差しが半袖を着た私の両腕を焼き付けてきた。そんな光の中で、松の木は、灰色の、太く堅い幹をうねらせながら空高く伸びている。町の南方にある古墳群、大陵苑でのことである。
 慶州に認められる遺物は、韓国の歴史の中で「点」として存在している。今や高麗青磁の最大のコレクションは日本にあり、その技術も失われてしまった韓国は、常に、戦いによって文化そのものの入れ替わりを経験してきた。それ故、慶州にあるものは慶州にしか無い。と、そんなことを考えていた。
 松林を出た後、あまりにも眩しい光に堪えきれず、みやげ物屋で帽子を買った。

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