化学物質の生態リスク評価と規制 −農薬編−
農薬汚染の動態、農業類生態影響の調査・研究、「環境リスク評価と規制」 新たな展開・日米欧の比較、農薬類生態影響評価の目的と展望 |
本書の特色
1.国内の様々な水環境における農薬汚染の動態を詳細に調査・研究した事例を解説する。 2.農薬類の生態影響評価に関する調査・研究をバイオマーカー・バイオモニタリングから生物個体、
実験生態系、水田生態系、現場試験、生物調査など様々なレベルで取り扱った。 3.「生態リスク評価と規制」、日米欧の手法の具体的な記述と比較からそれぞれの特徴を概説。 4.生態リスク初期評価、水生生物保全のための環境基準、PRTR、化審法など農薬の関わりを概説。
5.生態影響評価の目的、問題点と今後の展望など。 |
編著者 |
畠山 成久 (前)独立行政法人 国立環境研究所 |
監 修 |
日本環境毒性学会 |
執筆者 |
田辺 信介 |
愛媛大学 沿岸環境科学研究センター 教授 |
(執筆順・複数執筆者 は以下省略) |
畠山 成久 |
前(独)国立環境研究所 |
雑賀 修 |
鞄曹分析センター |
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星野 敏明 |
バイエルクロップサイエンス |
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吉岡 義正 |
大分大学 教育福祉科学部 |
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海老瀬潜一 |
摂南大学 工学部 |
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井上 隆信 |
豊橋技術科学大学 建設工学系 |
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須戸 幹 |
滋賀県立大学 環境科学部 |
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永淵 修 |
千葉科学大学 危機管理学部 |
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河上 強志 |
東京理科大学 薬学部 |
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茂岡 忠義 |
横浜国立大学 大学院環境情報研究院 |
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枡田 基司 |
且O菱化学安全科学研究所 |
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水流 文子 |
且O菱化学安全科学研究所 |
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大久保博充 |
且O菱化学安全科学研究所 |
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宇野 誠一 |
鹿児島大学 水産学部 |
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青山 勳 |
岡山大学 資源生物科学研究所 |
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相田 美喜 |
(独)農業環境技術研究所 |
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池田 浩明 |
(独)農業環境技術研究所 |
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菊地 幹夫 |
神奈川工科大学 工学部 |
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菅谷 芳雄 |
(独)国立環境研究所 |
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大嶋 雄治 |
九州大学 大学院農学研究院 |
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仲山 慶 |
愛媛大学 沿岸環境科学研究センター |
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Kanglk Joon |
九州大学 大学院農学研究院 |
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島崎 洋平 |
九州大学 大学院農学研究院 |
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本城 凡夫 |
九州大学 大学院農学研究院 |
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花里 孝幸 |
信州大学 山地水環境教育研究センター |
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昆野 安彦 |
東北大学 農学部 |
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村岡 哲郎 |
(財)日本植物調節剤研究協会 研究所 |
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高橋 義行 |
(社)日本植物防疫協会 研究所 |
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坂 雅宏 |
京都府 保健環境研究所 |
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岩田 久人 |
愛媛大学 沿岸環境科学研究センター |
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若林 明子 |
淑徳大学 国際コミュニケーション学部 |
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早川 泰弘 |
農林水産省 東北農政局 |
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早水 輝好 |
環境省 総合環境政策局 |
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山崎 邦彦 |
(独)国立環境研究所 |
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宗 和弘 |
JA全農 営農・技術センター |
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川井 正 |
日本曹達 小田原研究所 |
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杉山 裕隆 |
日本曹達 小田原研究所 |
体裁/価格 |
体 裁/A4判 380ページ |
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発刊日/2006年11月30日 |
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定 価/33,600円(本体価格:32,000円+税) |
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発 行/アイピーシー出版部 |
発刊にあたり |
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本書は環境毒性学会(編)として発刊されましたが、その経緯、目的等に関し簡単に触れておきます。 環境毒性学会は、1994年に当初はエコトキシコロジー研究会として設立され、その後1997年に会名が変更され今日に至っています。本学会の目的は「化学物質等の生態影響に関する研究の進歩と普及をはかること、(会則より)」としています。そのための主要活動は現在のところ、年1回の研究発表会、学会誌の発行、関連セミナーの開催などであります。さらに本学界の目的に資するものとして、関連書籍の刊行を目途に「生態影響試験ハンドブック」を刊行しました。引き続き、本書が刊行される運びとなり、編集幹事としても多大な感謝の意を表する次第であります。本書のタイトルは当初、「化学物質の生態リスク評価と規制」でしたが、その後の検討で、内容的に農薬類を主体として、「−農薬編−」を付記することになりました。その理由は、 1)
農薬類は生物活性を有する特別の化学物質であり、それが季節的にも集中して散布され、 広く環境を汚染する可能性があること、 2)
化学物質の中で農薬類は、環境中での挙動、各種生物に対する毒性データが比較的揃っていること、
3)
農薬類は過去だけでなく、今後も生態影響を引き起こす可能性を含み、生態影響評価、
生態リスク評価を具体的な事例をもって概説できること、などです。また、一時期環境ホルモンの生態影響が喧伝され、その後約10年を経過しましたが、化学物質の生態リスク評価において環境ホルモン作用以外の諸問題も大きいことを改めて世に問いたいところです。(第1章・序論から抜粋、編集幹事)
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目次 |
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第1章 序論 |
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1.1 はじめに 1.2 農薬概論
1.2.1 わが国の農薬の変遷
1.2.2 農薬の農業に対する寄与
1.2.3 環境に係る安全対策と法規制の歴史
1.2.4 農薬の種類
1.2.5 製剤型と使用方法
1.2.6 製剤型と環境負荷の低減
1.2.7 農薬登録に係るデータ要求の歴史
1.2.8 農薬登録に必須な試験成績と各種基準による規制
1.2.9 水産動植物に対する試験成績
1.2.10 水質の基準値
1.2.11 水産動植物その他に対する規制の動向 |
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1.3 生態影響評価の目的
1.3.1 生態系への理解 1.3.2 生態系のルール 1.3.3 環境倫理 1.3.4 技術と倫理 1.3.5 ソフトランディング 1.3.6 リスク 1.3.7 環境の価値の科学 1.3.8 一般的な生態学的リスクの評価と管理 1.3.9 化学物質によるリスク 1.3.10
化学物質のリスク評価の考え方 |
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1.4 農薬類生態リスク評価と規制の概要 1.4.1 農薬類の生態影響評価に関する調査・研究の特徴 1.4.2 行政関連、公的試験の概要
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第2章 農薬類の環境汚染と動態 |
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2.1 水域流出の実態と背景 2.1.1 水系への農薬流出と影 2.1.2 農薬の流出特性 |
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2.2 PRTRによる排出量の推計 2.2.1 PRTRとは 2.2.2 農薬排出量の推計方法 2.2.3 農薬排出量の推計結果 2.2.4 PRTRの農薬排出量の使用上の注意 |
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2.3 田園河川 2.3.1 田園河川での農薬観測の変遷 2.3.2 恋瀬川流域の農薬調査例 2.3.3 田園河川の農薬流出特性 |
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2.4 大規模河川の淀川での農薬流出の動態 2.4.1 淀川の特徴 2.4.2 淀川での農薬調査 |
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2.5 湖沼 2.5.1 琵琶湖における農薬の動態 2.5.2 霞ヶ浦における農薬の動態 |
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2.6 ダム湖内での農薬の動態 2.6.1 ダム湖および流入河川の除草剤濃度 2.6.2 ダム湖内での除草剤の鉛直分布 2.6.3 ダム湖内での除草剤の現存量と定量評価と農薬消長モデ |
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2.7 底質中の農薬残留について 2.7.1 底質中の残留農薬の時期変動傾向 2.7.2 底質中の残留農薬の面的分布 2.7.3 底質中の残留農薬の鉛直分布 2.7.4 底質中の農薬の残留および分解性 |
第3章 農薬類の生物濃縮と影響 |
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3.
1 序論 3.1.1 生物濃縮の定義、用語について 3.1.2 化学物質の生物濃縮のメカニズム |
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3.2 農薬等の化学物質の生物濃縮性評価法 3.2.1 生物濃縮性の評価方法(予測法−化学物質の脂溶性と生物濃縮−) 3.2.2 生物濃縮性の評価法(試験法−魚類を用いる試験方法−) 3.2.3 生物濃縮性に関する国内外の規制 |
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3.3 貝類の農薬類生物濃縮 3.3.1 実環境下と実験室内での農薬の生
物濃縮係数の比較 3.3.2 野外における貝類中の農薬の体内分布 |
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3.4 生物濃縮の数学モデル 3.4.1 実験的研究と数学モデル 3.4.2 決定論的モデル 3.4.3 確率モデル |
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3.5 農薬類汚染時期の食物連鎖による生態リスク 3.5.1 被食者〜捕食者、食物連鎖モデル 3.5.2 一次生産者〜一次消費者、食物連鎖による農薬類の生態リスク 3.5.3 一次消費者〜捕食者、食物連鎖モデルによる農薬類の生態リスク評価 3.5.4 底生生物〜捕食者、食物連鎖モデルによる殺虫剤の生態リスク評価 3.5.5 河川生態系、食物連鎖モデル系での農薬類生態リスク評価 |
第4章 個体レベルでの農薬類生態リスク評価 |
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4.1 はじめに 4.1.1 農薬類の暴露環境と生態リスク評価 4.1.2 行動変化による生態リスク評価 4.1.3 生態影響レベルの経年変化 |
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4.2 一次生産者、藻類他 4.2.1 藻類・ウキクサに対する除草剤の影響 4.2.2 維管束植物 |
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4.3 甲殻類を用いた評価 4.3
1 ヌカエビによる生態リスク評価 4.3.2 ミジンコ類 |
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4.4 水生昆虫 4.4.1 感受性の種間差 4.4.2 試験生物・試験法 4.4.3 慢性影響試験(エンドポイント、問題点) 4.4.4 野外実験による水生昆虫への生態リスク評価 |
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4.5 農薬類底質汚染の生態リスク評価 4.5.1 各種底質毒性評価法 4.5.2 農薬汚染底質の毒性発現暴露経路の検討 4.5.3 汚染底質の繁殖に対する生態リスク評価 4.5.4 汚染底質の生態リスク評価に伴う問題点 4.5.5 農薬類、微量・複合汚染底質による生態リスク評価の手法と問題点 |
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4.6 行動変化(無脊椎動物) 4.6.1 化学物質による行動変化 4.6.2 バイオアッセイと毒性試験 4.6.3 化学物質の無脊椎動物の行動への影響 4.6.4 ヌカエビの行動変化を利用した河川水モニタリング手法 4.6.5 農薬のリスク評価指標としての行動変化 |
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4.7 生態リスク評価と行動影響評価 4.7.1 通常行動 4.7.2 摂餌行動 4.7.3 天敵からの回避行動 4.7.4 繁殖行動 4.7.5 群行動
4.7.6 魚の行動を用いた水質毒性評価 |
第5章 生態系、生物群集レベル |
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5.1 はじめに 5.2 実験生態系を用いた影響評価 5.2.1 生態系への直接および間接影響 5.2.2 実験生態系の構築 5.2.3 実験生態系を用いた実験の実際 5.2.4 メソコスム実験結果の影響評価への適応 |
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5.3 水田生態系の昆虫類に及ぼす農薬の影響 5.3.1 水田の生態系 5.3.2 水田環境の生物相 5.3.3 農薬の水田生態系への影響 5.3.4 水生昆虫の農薬感受性 5.3.5 農薬影響の野外圃場試験 |
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5.4 野外水系モデルを用いた生態影響調査 5.4.1 野外水系モデルを用いた試験法開発の背景 5.4.2 流水型野外水系モデルの概要 5.4.3 水系モデル中でみられる水生生物 5.4.4 調査事例 |
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5.5 両生類のリスク評価 5.5.1 両生類の特徴・生態系における役割 5.5.2 両生類と農薬の接点−幼生期と変態後 5.5.3 感受性における種差 5.5.4 発生段階による感受性の差 5.5.5 毒性試験におけるエンドポイント 5.5.6 生殖器官に対する影響調査について |
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5.6 河川生態系への農薬影響 5.6.1 殺虫剤の河川生態系への生態リスク評価 5.6.2 山地渓流の生物群集に及ぼす殺虫剤の生態リスク評価 5.6.3 水田地帯流下河川の生態リスク評価 5.6.4 水生昆虫に対する慢性的なリスク評価 5.6.5 農薬類による河川生態系への影響と回復 |
第6章 バイオマーカーによる影響評価 |
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6.1 エステラーゼ他 6.2 CYP関連 6.2.1 CYP1群 6.3.2 CYP2群 6.3.3 CYP3群 |
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6.4 高次バイオマーカーによる魚類の慢性影響評価 6.4.1 組織像による化学物質の慢性影響の評価 6.4.2 繁殖影響、次世代影響
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第7章 生態影響評価に関連する規制の動向 |
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7.1 はじめに 7.2 農薬取締法 7.2.1 農薬取締法における生態リスクに関する規制の歴史 7.2.2 新たな展開 7.2.3 改正登録保留基準の施行に当たって |
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【参考】PEC算定の方法 7.3 化学物質審査規制法 7.3.1 概要 7.3.2 農薬の取扱い 7.3.3 目的 7.3.4 新規化学物質と既存化学物質 7.3.5 規制対象物質と規制の内容 7.3.6 審査・判定の手順及び試験項目 7.3.7 第三種監視化学物質の判定基準 7.3.8 暴露可能性が低い場合の審査 7.3.9 監視化学物質を特定化学物質として規制すべきかどうかの審査・判定 7.3.10 予防的措置 7.3.11 有害性情報の報告 7.3.12 化審法改正の意義 |
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7.4 農薬の環境リスク初期評価 7.4.1 化学物質の環境リスク初期評価とは 7.4.2 環境リスク初期評価における暴露評価 7.4.3 環境リスク初期評価における生態リスク評価の概要 7.4.4 農薬に対する生態リスク評価の例 |
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7.5 環境基準の改訂 7.5.1 設定の経緯 7.5.2 水環境の現状 7.5.3 水生生物の保全に係る水質目標の考え方 7.5.4 対象物質と利水目的に応じた基準の設定 7.5.5 対象生物の選定 7.5.6 利水目的による水域区分 7.5.7 対象物質 7.5.8 水質目標値導出の手順 7.5.9 環境基準の設定 7.5.10
類型指定と排水基準の設定に向けた検討 |
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7.6 実環境での生態リスク評価の問題点と展望 7.6.1 農薬取締法における生態リスクの評価・管理措置の課題と今後の展望 7.6.2 農薬学会
7.6.3 農業生産における生態リスク
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第8章 欧米の公的リスク評価と規制 |
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8.1 欧米での評価と規制の特徴 8.2 環境動態予測モデルと暴露評価の方法 8.2.1 EPAにおける環境中予測モデル 8.2.2 EUにおける環境中予測モデル 8.2.3 各種モデルにおける計算例 |
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8.3 EUのリスク評価と規制 8.3.1 登録申請と評価方法の概略 8.3.2 リスク評価に必要な情報と試験データ 8.3.3 生態影響リスク評価の方法 |
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8.4 EPA-FIFRAのリスク評価 8.4.1 登録申請と評価方法の概略 8.4.2 リスク評価に必要な情報 8.4.3 生態影響評リスク価の方法 8.4.4 Probabilistic
Risk
Assessment |
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8.5 日本と欧米の比較 8.5.1 生態影響評価の法律的背景 8.5.2 生態影響評価の概要 8.5.3 環境中予測濃度(PEC)を求めるための手法 8.5.4 毒性影響レベルを求めるための試験方法 8.5.5 リスク評価手法の比較 |
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付録1 供試生物について 付録2 GLPについて 別 添 農薬の毒性に関する試験の適正実施に係る基準 |
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索 引 |