K’sストーリー第四章 Kたちの夏(2)
 夏旅行が決定してから、俺たちはできる限り夏休みの宿題を終わらせていた。もちろん
俺と克美さんは休みに入る前の予定通り、毎日一緒に図書館で勉強した。その間に薫の親
父さん…つまり、俺のおじさんから宿泊代などの連絡が入ったので行くメンバー全員に伝
えておいた。そして、あっと言う間に出発の当日になった。その日は快晴だった。
「ふあ〜、眠いよぉ…」
 本当に眠そうな声でそう言ったのは克美さん。その日の朝、俺たち五人は最寄の駅で電
車を待っていた。ここから電車に乗って、薫たちのいる海辺の街までは二時間半以上かか
る。朝早くということでみんな眠そうだったが、特に克美さんが一番眠たそうだった。そ
の彼女に俺はたずねてみる。
「克美さんって、毎日朝ご飯作ってたりしてるんだから、朝早いの平気なんじゃないです
か?」
「そうだけど、今日のことが楽しみで、昨夜はよく眠れなかったの。ねえ健吾くん、電車
に乗ったら中で寝れる?」
「ええっと、乗り換えは二回ありますけど、最初の乗り換えまではそんなに時間ないです
ね。だからちょっと寝れないかも…。でも、一度乗り換えちゃえば次の乗り換えまで結構
ありますし、二回目から最後までも寝る時間はあると思いますよ」
「そっかあ。それじゃ悪いんだけど、中で寝てもいいボク?」
「構いませんよ。ちゃんと起こしますから」
 俺は克美さんにそう言ったのだが、その後で、仁が他の二人の女の子にこう言った。
「喜久さんと香菜ちゃんも、眠たかったら寝ちゃっていいよ。俺と健吾が責任持って起こ
すから」
「そう?でも、男の子に寝顔見られるなんて恥ずかしいし、やめておくわ」
「いやいや、君たちみたいなかわいい娘だったら、寝顔もかわいいに決まってるよ」
「そんな…かわいいだなんて…」
「おい仁、喜久はともかく香菜ちゃんはそういうセリフ言われただけですぐに顔が赤くな
る娘なんだ。あんまり軽い気持ちで言うな。それより電車来たぞ。みんな、乗るよ」
「お〜」
 克美さんの返事だったが、やはり眠そうでどこか力が抜けていた。そして俺たちは電車
に乗り込んだのだが、案の定、克美さんはさっそく車内で目をつぶってしまった。
「もう、一回目の乗り換えまでは時間がないって言ったのに…克美さん、克美さん」
「ふぇ?あれ?もうついたの?」
「まだですけど、この電車に乗ってる時間は短いんですから寝ちゃダメですって」
「そっか…わかった、我慢する」
 そうして克美さんは目を開き続けた。あまりに必死に目を開けた状態をキープしようと
しているので、なんだか気の毒になった。そしてそのうち、電車は最初の乗り換え駅につ
いた。乗っていた電車を降りて次の電車の出るホームまで歩いている時はさすがに眠気も
いくらかは飛んだようだが、ホームについて電車が来るまでの数分間で、またもや克美さ
んの眠気がぶり返してきたようだ。
「克美さん、もう少しで電車に乗れますから。もうちょっとですよ!」
「うん…」
 もう限界が近づいてきているようだ。とその時、電車がホームに入ってきた。
「乗りますよ克美さん。他のみんなも大丈夫だね?」
 俺は念のために仁たち三人にも確認を取った。そして、無事に全員で電車に乗ることが
できた。
「あー、これでやっと寝れるんだあ…」
「そうですね、次の乗り換え駅までだいたい一時間ぐらいありますから。近くなったら起
こしますよ」
「うん。それじゃおやすみ、健吾くん」
 そう言って克美さんは目をつぶった。やれやれ、これでとりあえず一段落か。そう思っ
た俺の耳に、こんな仁の言葉が飛び込んできた。
「おい健吾、こっちの二人も寝ちゃったみたいだぞ」
「えっ?」
 その言葉を聞いた俺は喜久たちの方を見てみた。仁の言う通り、彼女も香菜ちゃんも目
を閉じている。それで俺はこうつぶやいた。
「あんなこと言ってても、やっぱり睡魔には勝てなかったか…」
「そうだな。だけど見ろよ健吾、思った通り、三人ともすっげえかわいい寝顔だぜ。写真
撮っちゃおうかな〜」
「やめとけ。さっき喜久が見られるの恥ずかしいって言ってたんだ、見るのはともかく写
真なんか撮ったのがばれたら、好感度ダウンだぜ」
「それもそうだな。じゃあせめてしっかりと心に焼き付けておくか」
 そう言って仁は三人の女の子…特に喜久の寝顔をじーっと見た。俺も仁ほどではないに
しろ、克美さんたちの顔を見てみた。確かに写真に撮って残しておきたいほどかわいい。
だけど自分で仁にああ言った手前、我慢した。そしてそのうち電車が乗り換え駅に近づい
たので、俺と仁は女の子たちを起こした。その際、目を覚ました喜久に、「何か変なこと
しなかったでしょうね?」と聞かれた。その質問に俺と仁は、首を何度も横に振りながら
何もしてないよと答えたのだった。

 その後俺たちは、二度目の乗り換えも無事に済まし、後は目的地の駅まで行った。その
駅についたのは、だいたい11時ぐらいだった。こちらも出発の街同様、快晴だ。
「うわぁ〜、やっとついたあ〜!」
 駅の改札を出た直後に大きく伸びながらそんなことを言ったのは克美さんだった。電車
の中で十分に眠ったおかげか、もう眠くはないようだ。
「さて、薫が迎えに来てくれるはずなんだけど…まだ来てないのかな?」
 俺が辺りを見回しながらそう言った時、こんな声が耳に入ってきた。
「セ、センパイ!間さんがいません!」
「な、何だって?」
 香菜ちゃんの言葉に、俺たち四人は周囲を見渡して仁のことを探した。そして−。
「あっ、健吾くん、あそこ!」
 克美さんが仁を見つけたようだ。それで、仁は何をしていたかと言うと−ちょっと離れ
た場所で、一人の女の子に声をかけていた。髪の毛はベリーショートで、タンクトップ&
ショートパンツから真っ黒に焼けたやや筋肉質な肌が大胆に露出していた。魚でも入って
いそうなクーラーボックスを肩からかけ、そして最大の特徴として、手にモリを持ってい
た。そう、魚を捕まえるのに使うあのモリだ。
「ナ、ナンパでもしてるんでしょうか間さん…」
「健吾くん、止めた方がいいんじゃないの?」
 香菜ちゃんと克美さんはそう言ったが、二人とは対照的に、俺と喜久はこう言った。
「いや、相手があいつなら大丈夫だ。なあ喜久?」
「そうね。あの娘、彼女でしょ?」
「???」
 克美さんたちは俺たちの言葉の意味が理解できてないようだったが、ともかく俺たちは
遠くから仁とその女の子を見ていた。しばらくは仁が一方的に女の子に話しかけていただ
けだったが、そのうち状況が変化した。
「ああっ、仁くんがモリで刺されたぁ!?」
「いえ、柄の方で突いただけですね。でも、まともにみぞおちに入ってますよあれ…」
「うわっ、仁くん膝ついた…」
 その意外な展開に香菜ちゃんと克美さんは驚いたようだったが、俺と喜久はやっぱりあ
あなったかという感じで顔を見合わせた。
「あの娘、いったい…?健吾くん、知ってるの?」
「あっ、こっち見ました。えっ、近づいてくる…?」
 その女の子がこちらにやってきたので、思わず俺の後ろに隠れようとする克美さん&香
菜ちゃん。まあ、あんな物を見せられた直後じゃ仕方がない。そして俺たちの近くまで来
ると、その娘は口を開いた。
「健吾…だよな?中3の冬以来だけど、あまり変わってないからすぐわかったぜ」
「そういうおまえこそ変わってないな、薫」
「こ、この人が薫…さん…?」
「健吾くんのいとこの!?男の子じゃなかったの!?」
 驚く香菜ちゃんと克美さん。そんな二人に気をとめる様子もなく、薫は何やら数を数え
始めた。
「1、2、3、4…あれ?五人って話だったよな?あと一人はどうした?急に来られなく
なったとか?」
「いや、ちゃんと来てるぜ。あれだあれ」
 そう言って俺は、いまだに膝をついたままの仁を指差した。
「ああ、あのナンパバカか。あんまりしつこかったから突いてやったんだけど、あいつが
おめーの連れだったとはな」
 その時、ようやく仁が立ち上がった。俺と薫が話していることに気がつくと、突かれた
腹を押さえながらこちらにやってきて、そして言った。
「健吾、まさかこの娘がおまえのいとこか?かわいかったから声かけたら、こんなことに
なるなんて…痛てててて…」
「ああそうだよ。加賀薫、俺の母さんの弟の娘」
「娘…なんだ…」
「女性…だったんですね…」
「何だおめーら、オレが女で悪いってのか、ああ?」
 なんだか、薫は少し切れそうになっているみたいだ。仁にナンパされたことも多少は絡
んでいるのだろうか。その薫を落ち着かせるように喜久が言った。
「みんな、薫くんが男の子だと思い込んでたから、意外に思ってるだけよ。女の子で悪い
なんて、そんなこと全然思ってないわ」
「何だ?オレのことを薫くんだなんて言いやがって…って、おめー、喜久か!?」
 ここで薫はようやく、今話をしている相手が昔会ったことのある女の子だとわかったら
しい。そしてこの懐かしい再会に、薫の不機嫌さが吹っ飛んだようだ。
「ずいぶんと久しぶりだな!小6の夏以来かあ?いやー、いい女になったじゃねえか!背
もすっげー伸びてよー。今いくつだ?」
「170ぐらいね。だけど、そういう薫くんもわたしと同じぐらいあるじゃないの。それ
にしても薫くん、以前にも増して活発になったみたいで…」
「まあな。おい健吾、悪いがちょっと味見させてもらうぜ」
「えっ?味見?」
 俺は薫の言った言葉の意味がわからなかったが、次の瞬間、彼女は意外な行動に出た。
(ムニュッ)
「きゃーっ!?」
 喜久が大きな声を出した。彼女が何をされたかと言うと−薫にいきなり胸をわしづかみ
にされたんだ。
「な、何するのよ薫くん!?」
「いやあ、もしかして詰め物でも入ってるんじゃねえかって思ってな。でも、今の触りご
こちは紛れもなく本物だな」
 そう言う薫は、悪びれた様子もなく笑っている。そして、この様子を見ていた仁はこん
なことを言った。
「俺、何かすごくいい物を見た気がする…」
「忘れろ仁」
「いやいや、そう簡単に忘れられないぜこれは。でも喜久さん、君って女子高行ってるん
だから、学校で今みたいなことしたりされたりしてるんじゃないの?」
「してないしされてません!」
 そう言う喜久の顔はかなり赤くなっていた。それで俺は薫に言った。
「おまえなあ薫、女の子同士だからまだいいけど、男がそれやったらある意味犯罪だぜ。
例えばこの男がおまえの胸つかんだらどうする?」
「こいつでぷっ刺す。さっきは柄で突くだけだったけど、今度は刃を貫通させる」
 そう言って薫は手に持ったモリを光らせた。
「そ、それは行き過ぎだけど、とにかく本来ならそんなことされても文句を言えないよう
な行動だってことだよ。これから気をつけた方がいいぜ」
「わかったわかった。ところで悪いな健吾、おめーの女にこーゆーことしちまってよ」
 薫が言った。どうやらこいつは勘違いをしているようだ。それで俺はこう答えた。
「言っとくけど薫、俺と喜久は別に付き合ってるわけじゃないから。俺の彼女は…」
 そう言って俺は、しばらく傍観者になっていた克美さんの腕を軽くつかみ、彼女を自分
の側に引き寄せた。
「この人だ」
「はあっ?おめー、喜久を捨ててそんなちっこいのとくっついたのか?」
「おいおい、捨てたなんて人聞きの悪い言い方するな。もともとそういう関係になるよう
な間柄じゃなかったんだよ俺たちは。それに、克美さんのことちっこいって言うな」
「克美っていうのかそいつ。ちっこいのは事実だろうが。まさか健吾がそんな中学生…い
や、小学生か?ともかくそんな小娘と付き合ってるとは思わなかったぜ」
「ボク、これでも高校3年生なんだけど…もう慣れてるからいいけどね」
「えっ、おめー、オレや健吾よりも年上?悪い悪い。んで、そっちの気が小さそうなぽっ
ちゃり気味のメガネ姉ちゃんは何てえんだ?」
 薫にそう言われたので、香菜ちゃんが口を開いた。
「あ、あの、わたし、東センパイの部活の後輩で、桂香菜といいます。薫さん、こちらに
いる三日間、よろしくお願いします」
「ああ、よろしくな。で、最後はナンパバカか」
「そのナンパバカってのはやめてくれよ。俺には間仁っていうそれはそれはエクセレント
な名前があるんだからさ」
「ふーん、仁ねえ。おめーは健吾とどういう関係なんだ?」
「親友だ。俺たちがこっちにいる間よろしくね、薫ちゃん」
「薫…ちゃんだぁ!?」
 薫の顔が少し怒りの形相になった。仁にちゃん付けで呼ばれたのが気に障ったようだ。
そして、それに感づいた仁はこうたずねた。
「えっと…薫ちゃんじゃご不満ですか?それじゃあ何て呼べばいいですか?薫さん?薫く
ん?そうでなければ、薫様とか…思い切って呼び捨てで薫なんて言っちゃったら、刺され
ちゃいます俺?」
「オレを小娘扱いするような呼び方でなけりゃ何でもいい。あと、そんな怖がるな」
 一度モリの柄で突かれてるんだから仁が怖がるのも無理はない。俺はそう思った。そし
て薫が俺たちにこう言ってきた。
「そんじゃ、そろそろここから離れるぞ。行き先はオレん家だ。ついたら、この中に入っ
てる、オレが捕まえた魚をさばいて食わせてやる」
「やっぱりそのクーラーボックスの中は魚なのか。でも、足りるかなそれで…」
「あ?十分過ぎるほどだと思うけどなオレは。とにかく行くぞおめーら」
 そうして薫の先導で、俺たちは彼女の家である民宿へと歩き出した。

 ここはかなり田舎だ。さすがに今の時期は海水浴客で人が増えるが、それでも俺たちの
住んでいる街に比べて車の通りも少ない。そしてしばらく歩いて薫の家についた。およそ
一年半ぶりだが、変わっていない。
「親父ー、健吾たち連れてきたぞー!」
 玄関先で薫が家の中に向かってそう叫ぶと、一人の男の人が出てきた。この人が薫の親
父さん…つまりは俺のおじさんだ。俺の姿を確認したおじさんはこんなことを言った。
「いやー、久しぶりだな健吾。前に会った時よりもいい男になってるよ。さすがは健治義
兄さんの血を引いているだけのことはある」
「ご無沙汰してますおじさん。でも俺、そんなにカッコよくないですよ」
「いや、カッコいいカッコいい。そうでなきゃ、女の子を四人もはべらせれらないって」
「オレも入ってんのかよ。とにかく、こいつらの面倒はオレがメインで見るからな。おい
おめーら、部屋はこっちだ。ついてこい」
 薫がそう言ったので、他のみんなはおじさんに挨拶をしてから薫についていった。その
際、喜久はやはり懐かしがられていた。そして俺もみんなについていこうとしたのだが、
おじさんに呼び止められた。
「なあ健吾、姉さんは元気なのかい?」
「さあ、おそらくは元気だと思いますが…。なんせ、親父にくっついて京都に行っちまっ
て以来、電話でしか話してませんし…。それより、薫のことなんですが…」
「何だい?」
「…さらに男っぽくなりましたね」
「ああ…。容姿の方は、服さえ気をつければ女の子らしくなるのかもしれないが、あいつ
はそんな服が嫌いみたいだし…。もう一人は高校を卒業した直後に家を飛び出して以来、
めったに帰ってこないし…」
「ああ、満夫兄さんですか。あの人、今どこにいるんです?」
「知らないよ。世界中を放浪するって言ってたから、少なくとも日本じゃないことだけは
確かだ」
「…大変ですねおじさんも」
「強制的に一人暮しをさせられてる健吾ほどじゃないさ。まあ、こっちにいる間は私たち
夫婦のことを親だと思ってもらっていいから」
「ありがとうございます。じゃあ、俺もそろそろ部屋の方に行きますね」
「ああ」
 それで俺も克美さんたちよりも遅れてみんなが案内された部屋に行った。薫から聞いた
話の通り、六畳間が二つつながっていて、間はふすまで区切られている。一階にあるが、
地形の関係上、窓からは海が見えた。
「見て見て健吾くん、すっごいいい眺めだよ!」
 そんな風に一番はしゃいでるのは克美さん。もちろん他の三人も、ワクワクしていたり
するのが感じ取れた。そんな中で俺はあることに気がついた。
「そういえば、薫は?」
「台所に行くってよ。荷物置いたら俺たちも来いとさ」
「わたしたちのお昼ご飯の用意してくれるみたいです」
「さっき、魚をさばくって言ってたわよね。それじゃメニューはお刺し身ねきっと」
「新鮮なお刺し身!楽しみだなボク」
 そんなわけで、俺たち五人はこの家の台所に行った。そこでは薫が包丁を研いでいた。
そして俺たちに気がついて言う。
「来たかおめーら。ちょうどいい、今から魚をさばくところだ」
 そう言うと薫はここに来るまで持っていた例のクーラーボックスを開けた。結構な数の
魚が入っていた。
「それ、全部薫が取ったのか?」
「全部じゃねえな。中には市場で買ってきたのもある。それにしたって今朝入ったばかり
の新鮮な魚だがな。さて、そんじゃやるか。おめーらは見てやがれ」
「ねーねー薫くん、最初の一匹だけボクにやらせてくれない?取れ立てのお魚さばくの、
やってみたかったんだあ」
「おめーがか克美?できんのかよ?おもしれえ、やってみせろ」
「わーい。それじゃ、この包丁使わせてもらうね」
 そう言うと包丁を持った克美さんは慣れた手つきで魚を刺し身にした。
「うーん、やっぱりボクん家の近くで買う魚とは違うなあ」
「ほう、やるじゃねえか。ま、認めてやらあ。そんじゃ残りはオレがやるからよ」
 そうして残りの魚は薫がさばいた。克美さんに劣らないほどの包丁さばきだった。薫の
話では魚料理なら人並み以上に作れる自信があるということだ。たくさんの魚がテーブル
に並び、俺たちはそれを食べた。久しぶりに食べるここでの魚はやっぱりうまい。他のみ
んなもうまそうに食べている。中でも克美さんは−。
「うーん、すんごくおいしー!薫くん、ご飯もう一杯おかわりしてもいい?」
「米はたくさんあるから別に構わねえけどよ…三杯目だぞ。大丈夫なのか?」
「うん。お刺し身がおいしいからご飯も進んじゃうんだ」
「薫、心配するな。その人の胃袋は普通じゃないんだから」
「まあ、おめーがそう言うなら大丈夫なんだろうけどよ…」
 薫はそう言った。なお、克美さんの大食いをもう見慣れている他のみんなは、特に気に
する様子もなく食事を続けていた。

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