K’sストーリー第七章 二組目の始まり(5)
 それからあっと言う間に日は過ぎた。今日はいよいよ俺たちの学校の文化祭の日だ。正
確に言うと、昨日からもう文化祭は始まっていて、今日は二日目である。昨日は学内の人
間のみに展示などをしていたが、今日は日曜日ということで一般開放される。
「東さん、これでようやく一段落と言ったところでございますね」
 俺の隣でそう言ったのは柳沼だった。ここは漫画部が似顔絵描きをするために取った教
室。今は俺と柳沼の二人が店番をしているのだが、さっきからほとんどひっきりなしにお
客さんが来ていた。
「まったく、なんだって俺たちが当番の時に限ってこんなにお客さんが来るんだよ」
 俺は少し不満そうに言った。それに柳沼が返答する。
「時間がちょうどよいのではないでしょうか。そもそもにして、全体的なお客様の人数が
昨日よりも多くなっておりますし」
「そりゃ、今日は学外に開放してるしな。けどクラスでやってる喫茶店も、俺と仁が入っ
てる時にかなり忙しかったんだよなあ。特に女の子のお客さんが多かったし」
「それに関しましては、この時間にいるから来てくれと間さんが呼んだ、ということも考
えられますね」
「そうか…。あいつのことだから、その可能性もある…。そうなると、午後にもう一回あ
いつと一緒に店番する時も、また女の子多いんだろうか…」
「それはその時になってみませんとわかりませんが、それよりも問題は今でございます。
またお客様が入ってこられましたよ」
「げっ、本当だ。…ん?あの二人、どこかで見たような…」
 俺たちは教室の一番奥にいたのだが、そこから一番遠い出入り口から入ってきた二人組
の男に見覚えがあった。そしてその二人が俺に気がつく。すると顔を見合わせた二人は一
気に俺の方に詰め寄ってきて、一人がいきなりこう言った。
「まさかこんな所で会えるとはなあ…。俺たちの顔を忘れたとは言わせねえぞ!」
「えっ?誰だったっけ?」
「とぼけんな!こっちは聖蓮でやられた所がまだ痛むんだよ!」
 そう、こいつらは喜久の学校の文化祭でケンカをしたあの二人だったんだ。どうしてこ
んな所でこいつらに…。しかもまだ痛むって、それやったのほとんど仁だし…。俺がそう
思っていると−。
「どうやらあの時一緒にいたヤツはいないようだな。あの時かかされた恥は、たっぷり仕
返しさせてもらうぜ!」
 やばい、こいつらここで俺をやるつもりだ。俺一人じゃ絶対無理…と思っていると、あ
る人間が教室に入ってきて、後ろから二人の肩を叩いた。
「何だよ、邪魔するなよ」
 そう言って振り返りもしない男の肩を、さらにそいつは叩く。
「うるせえな、てめえ、いったい何様のつもりだ!?」
 そうして男が振り返るとー。
「仁様だぜ、俺は」
 肩を叩いていた男−仁が言った。そしてこいつは続ける。
「二度と俺の前に姿を現すなって言っておいたよなあ?それでも出てきたってことは、ま
たボコボコにされる覚悟があるって解釈で、いいのかなあ?」
 そう言いつつ仁は指の関節を鳴らす。すでにやる気満々のようだ。そしてそれを見た二
人の男は−。
「くっ、くくく…おまえ、命拾いしたな!今日は引き下がってやる!じゃあな!」
 そんな捨てゼリフを吐いて逃げるように教室から出ていった。そんな連中を見下すよう
に、仁が言う。
「けっ、三下風情が」
「サンキュー仁、いいタイミングで来てくれて助かったよ」
 俺は仁に礼を言った。するとこの男、こんなことを言ってきやがった。
「おまえさあ、俺が来なかったらどうしてた?あいつらとやってたか?」
「えっと…やる気がなくても、連れ出されてたと思う。それで、やられてたろうな」
「ま、そうだろうな。おまえは俺とは違って、ケンカ苦手だし。俺だったらあいつらごと
き、前みたいにさくっとぶっ倒すけどな」
「本当に乱暴なのですね、あなたは」
 急に柳沼が口をはさんできた。これに仁が反論する。
「うるせえなあ。俺が来たから、この教室であいつらに暴れられずに済んだんだろうが」
「あのお二方が素直に退散していただいたからよかったようなものの、あなたはここで暴
れる気が満々だったように見られましたが?」
「やる時はちゃんと外に出てくつもりだったよ。つーか、もう終わったことをいつまでも
言うなよ」
「そ、そうだよ柳沼。こいつのおかげで助かったのは事実なんだからさ」
「…よろしいでしょう。東さんの顔を立てまして、この話はここで終わりにいたします」
 柳沼がそう言ったので俺は安心した。そしてこいつは続けて仁に言う。
「それで間さん、ケンカのためだけにここにいらっしゃったのではありませんよね?ご一
緒にいらっしゃいました方が、教室の外で待ちくたびれていらっしゃるようですが」
「忘れるわけないだろう。こっちの騒動に巻き込みたくなかったから待たせてたんだよ。
おーい、もう入ってきていいよ」
 仁が教室の外に呼び掛けると、一人の女の子が入ってきた。
「あれ、喜久?来てくれたんだ」
「こんにちは健くん。せっかく健くんたちの学校に来たんだから、あなたのやってる所に
顔は出さないとね。というわけで、似顔絵描いてくれる?」
「ああ、わかった。それじゃ悪いけど、少しの間動かないでね」
 そうして俺は喜久の似顔絵を描き始めたのだが、その隣で−。
「間さん、鬼賀さんをただ待っているだけというのは時間の無駄だと思いませんか?」
「別に」
「そうですか。間さんさえよろしければ、僕があなたの似顔絵を描いてさしあげましょう
と思いましたのですが」
「おまえ、男の俺の顔なんか描くつもりか?俺がおまえだったらそんな不毛でつまらない
ことは自分から言わねえぞ」
「僕はあなたではありませんので。それでは、似顔絵は描かなくてもよろしいですね?」
「…待て。女の子からはカッコいい男って見られてるのが間違いない俺だが、同性のおま
えからどう見られてるのか気になる。描け。俺が最も美しく見える、この角度でな」
「かしこまりました。それでは、そのままの体勢でお待ちくださいませ」
 仁のヤツ、柳沼を上から見下ろしてやがる。ともかくそんなわけで俺の隣で柳沼も似顔
絵を描き始めた。そしてそのうち、まずは先に始めた俺の方が喜久の顔を描き終えた。
「よーし完成。どうかな、喜久?」
「あら、似てるじゃない。すごい上手。さすがはプロの漫画家さんのお手伝いしてるだけ
はあるわね」
「ほめてくれてありがとう。それじゃこれは君にプレゼント」
 そう言って俺が喜久の似顔絵を本人に手渡すその横では−。
「おい柳沼、まだかぁ?」
「もう少々お待ちくださいませ。…出来上がりました」
「見せろ。…ほーう、なかなかじゃねーか。もちろん実物には劣るが、それでもモデルに
なった人間のカッコよさがわかる絵だ」
「おほめいただき、ありがとうございます」
「それじゃあこいつはもらってくぜ。じゃあ喜久さん、行こうか」
「ええ、そうね」
「えっ、もう行っちゃうの?」
「喜久さんの似顔絵描いてもらったら、もうここにいてもしょうがないってことだよ。他
にもいろいろ案内したいし。じゃあな健吾。午後、クラスの喫茶店当番には遅れるなよ」
「バイバイ健くん。上手に描いてくれてありがとうね」
「ああ。もしよかったら、後で俺のクラスにも来てくれよな」
 というわけで仁と喜久は教室を出ていった。その後、また別のお客さんが来たので俺と
柳沼はまた似顔絵描きを続けたが、そのうち次のシフトの部員がやってきて、俺たちの番
は終わった。
「それじゃあ後はお願いしまーす。柳沼、腹減ってないか?」
「そうですね、多少の空腹感を覚えておりますです」
「じゃあ、一緒に何か食いに行かないか?」
「わかりました、ご一緒いたしましょう。聞きました話によりますと、お料理部の食事が
ものすごい評判だということでございますが…」
「お料理部か。確か克美さんが手伝ってるんだったよな。OK、それじゃそこ行こうぜ」
 そして俺と柳沼はお料理部が活動している家庭科室に行ったのだがすごく混んでいた。
「うわあ、人が多いなあ…。噂にたがわぬ評判ってところだな」
「ですが全てのテーブルが埋まっているわけではありませんし、順番待ちをしている方も
いらっしゃらないようですね」
「あーっ、健吾くんだあ」
 自分の名前を呼ばれた俺がそちらを見ると、エプロンを身につけ料理を運んでいる克美
さんがいた。
「いらっしゃいませー。来てくれてありがとう。空いてる席にどうぞ!」
「はい。それにしてもかなりの人ですね…」
「3年生のみんなが、高校で最後の文化祭だからってものすごく張り切ってるんだ。もち
ろんボクもね。そしたらこんな評判になるようなおいしい料理ができちゃって…。おすす
めはスペシャルカレーだよ。それじゃ忙しいからこれ以上お話できないけど、健吾くん、
ごゆっくりね」
 そう言って克美さんは接客に戻っていった。その後で俺は言う。
「ここに立ってても他の人の邪魔になるし、あそこの席座るか」
「そうですね。ところで質問なのですが…先ほどの片瀬さん、僕の存在に気がついていた
のでございましょうか?」
「…気づいてないかもな。俺しか目に入ってなかった可能性がある」
「…僕も、そんな気がいたしました」
 そんなことを言った後、俺たちはかろうじてと言った感じで空席になっている席に座っ
た。すぐにウェイトレスをやっている女生徒が水を持ってきたので、俺たちはそのまま克
美さんおすすめのカレーをオーダーした。そして料理を待っている間に二人で話をする。
「改めて見ても、ここ人多いなあ。漫画部にも結構たくさんお客さん来たけど、ここはそ
れ以上だよ」
「そうでございますね。東さん、一つお聞きしたいのですが、昨年の漫画部の様子はいか
がだったのでございましょうか?」
「うーん…ぶっちゃけ、あまり人気なかった…。みんなで本作ったんだけど、一貫性がな
くて単なる寄せ集め本になってたし…。それ考えれば、今年はもう大成功って言っていい
んじゃないかな」
「なるほど、よくわかりましたでございます。お互い午後にもう一度シフトがあるので、
その時にもがんばりましょう」
「そうだな。あっ、そういえば柳沼、おまえ午後の当番は香菜ちゃんと二人でやるんだっ
たよな?」
「そうでございますが、それが何か?」
「何かじゃねーよ。あの日…香菜ちゃんが倒れた日から、おまえら二人の関係に変化あっ
たのか?あったよな?」
「いえ、特には」
「なんで変わらねーんだよ!おまえ、彼女の気持ち知ってるんだろ?その上でこれまでと
変わらなかったら、香菜ちゃんかわいそうだろ!」
「…先ほどの答えを変更させていただきます。確かに、桂さんに返事はしておりませんの
で、表面上、僕たちの関係は変化がないように見られます。しかし、あの日から、僕の中
におけます桂さんの存在は次第に大きくなってきております。もしかすると、これが恋心
というものなのかと思い、少々戸惑っているところであります」
「だったらさっさとOKの返事しろ!香菜ちゃん待ってるんだぞ!」
「そうは言われましても、僕の胸の中にあるこの気持ちが本当に桂さんに対する恋心かど
うなのか自分でもわからず…」
「あーもうイライラすんなあ!俺は香菜ちゃんに幸せになってもらいたいんだよ!」
「僕とお付き合いをしましても、桂さんが幸せになるとは限りませんが」
「好きな人と恋人同士になれるんだから、それだけで幸せだと俺は思うけどな」
「そう…でございますか…」
 そう言って柳沼は何かを考え始めてしまった。そんな柳沼にそれ以上の言葉をかけられ
なくなってしまった俺は静かに料理を待った。
「お待たせしましたー」
 そのうち二つのうまそうなカレーが俺たちのテーブルに運ばれてきた。運んできたのは
克美さんだった。
「カレー二つで間違いないですね?熱いから気をつけてください。それと柳沼くん、さっ
きは気がつかなくてごめんねー」
「いえ、特に問題はございません」
「そう?それならいいんだけど。…あれあれ?柳沼くん、なんだか浮かない顔してない?
せっかくの文化祭なんだから、楽しくやろーよ!」
「…申し訳ございません、気をつけますです」
「うん、よろしい。それじゃ二人とも、よーく味わって食べてね」
 そして克美さんは接客に戻った。カレーを目の前にした俺は柳沼に言う。
「ひとまず、香菜ちゃんの件は置いておこうか。さっ、冷めないうちに食おうぜ」
「そう…でございますね…」
 それでカレーを食べ始める俺たち。克美さんが一人で作ったんじゃないようなのでいつ
も家で食べているのとは微妙に味が違ったが、それでもうまいことに変わりはない。柳沼
も言葉には出さないがおいしく感じているようだ。そして香菜ちゃんのことはひとまず置
いておこうと柳沼には言ったにもかかわらず、俺の頭の中には彼女のことが残っていた。

 お料理部でカレーを食べ終えて家庭科室を出ようとした際、俺は克美さんにもうすぐこ
こを抜けられると言われた。それで俺は柳沼とはここで別れ、彼女を待つことにした。少
しして克美さんと合流できたので、俺たちは二人で校内を見て回った。そしてそんな中、
克美さんが俺に言ってきた。
「ねー健吾くん、さっき家庭科室で柳沼くんとお話してたよね?内容、聞こえちゃった」
「えっ、聞こえちゃいました?そんなに大きな声だったかなあ…」
「そうでもなかったけど、健吾くんの声だから耳に入っちゃったんだ。それで、彼と香菜
ちゃん、進展ないみたいだねえ…」
「そうなんですよ。さっきの話からすると、柳沼のヤツ、香菜ちゃんのことかなり気には
なってるみたいなんですけど…」
「うまく行くといいね。それじゃ健吾くん、次どこ行く?」
「実は、今ちょうど漫画部で香菜ちゃんと柳沼が似顔絵描いてる時間なんですけど…行っ
ていいですか?」
「そうなの?それじゃそこ行こうよ」
 というわけで俺と克美さんは漫画部の教室へ。ちょうど香菜ちゃんがお客さんに似顔絵
を渡して、流れが途切れたところだった。
「二人とも、お疲れさん。調子はどうだい?」
「あっ、東センパイ…。結構、お客さん来てくれてます」
「先ほど僕と東さんが当番だった時よりも若干多いくらいでしょうか。特に男性のお客様
が増えましたように思えます」
 柳沼が言った。その理由はわかる。かわいい女の子の香菜ちゃんが当番をしているから
だろう。そんなことを思っていると、克美さんが口を開いた。
「ねーねー、ボクも似顔絵描いてもらいたいな」
「あっ、いいですよ。わたしと柳沼くんのどちらが描きましょうか?」
「うーん、そうだなあ…。それじゃ、柳沼くん!」
「僕…でございますか?かしこまりました。それではそのままでお待ちくださいませ」
 それで柳沼が克美さんの似顔絵を描き始めたのだが、この隙を見て俺はー。
「香菜ちゃん、ちょっといいかな?」
 彼女を教室の隅に呼び出し、そして質問をした。
「香菜ちゃん、柳沼と二人でここにいて、何かあった?」
「い、いえ…。実は、お客さんがほとんどひっきりなしに来ていたので、二人きりになれ
なくて…」
「そうか、それじゃ仕方がないな。まあ、そのうちどうにかなる…」
 俺がそう言いかけた時、急に聞き覚えのあるメロディが流れてきた。…って、これって
俺の携帯電話の着信音だ。見ると仁からの電話だったので出てみると−。
「こらー健吾ーっ!おまえ今どこで何やってんだー!?」
 いきなり電話越しに怒鳴られてしまった。仁は続ける。
「もう喫茶店の店番の時間になってるんだぞ!早く俺たちの教室に戻ってきやがれ!」
「えっ…?げっ、まずい…。ごめん香菜ちゃん、俺行かなきゃ」
 そうしてこの教室を出て急いで自分たちのクラスに向かう俺。その教室では「おしゃべ
り喫茶・BETWEEN」が繁盛していた。なおこの名前は発案者である仁の名字「間」
に由来している。ようやく室内に入った俺を待っていたのは、ウェイター姿の仁による、
またしてもの怒号だった。
「おっせえぞ健吾!どこほっつき歩いてやがった!もうそのカッコでいいから、さっさと
接客しろ!」
 一気に言われた俺は反論もできず、ただ一言「ごめん」とだけ言ってクラスのみんなの
手伝いに入った。最初は普通のウェイターだったが、途中からお客さんのおしゃべり相手
をすることになった。それは午前中と同様だったが、その時よりもお客さんが多い。この
時間帯は主に男子生徒が接客をしているので、当然のことながらお客さんは女の子が多い
のだが、中でも仁の知り合いの娘が多いようだ。やはり俺や柳沼が予想していた通り、自
分がいる時間に合わせて呼んだのだろうか。そしてまた新たなお客さんがやってきた。
「いらっしゃいませー。…あれ、克美さんと喜久…」
「もう、ひどいよひどいよひどいよー!」
 俺の顔を見るなり、いきなり克美さんが言ってきた。
「ボクのこと漫画部に残して一人で行っちゃうなんてさ!」
 言われた俺ははっとした。そうだ、香菜ちゃんと話してる時に急に仁から電話があった
もんだから、克美さんを置いてここに来ちゃったんだ。おかげで克美さんはぷりぷりして
いるようだ。そしてそれを喜久がなだめた。
「健くんも克美さんに意地悪して行っちゃったわけじゃないんですから、そんなに怒らな
くてもいいんじゃないですか?そんな風にほっぺた膨らませてたら、かわいい顔が台無し
ですよ?」
「えっ、そう?やだー、喜久さんってば。でも喜久さんがそう言うならもう怒るのやーめ
た。健吾くん、席まで案内してよ」
「あっ、はい。こちらへどうぞ」
 そう言って俺は女の子二人を席へ通した。二人ともホットコーヒーを頼んだので俺は厨
房スペースにいる女子にそれを伝えた。それと同時に別のお客さんが頼んでいた注文が上
がったので、それを持っていった。そしてその後もお客さんからの指名で話し相手になっ
たりで、俺は目まぐるしく動いていた。
「健くん、忙しそうね」
 喜久たちのテーブルの横を通った時、彼女に言われた。
「ああ、すんごい忙しい。物運ぶだけじゃなくて、おしゃべりもしなくちゃならないから
ね。でも君の家でちょっとでも働いてたのが、役に立ってる気がするよ」
「じゃあボクたちとお話しよーよ。それだったらあまり疲れないでしょ?」
「それじゃそうさせてもらいます。東健吾、四番テーブル入りまーす!」
 というわけで俺は克美さんたちのテーブルについた。すると、それとほぼ同時にクラス
メイトの一人が彼女たちが頼んだコーヒーを持ってきた。だがそれを運んできたのは女の
子だった。
「あれ?なんで近藤さんが外に出てきてるの?今の時間、女の子は厨房でしょ?」
「男子生徒がほとんどおしゃべりに入っちゃってるから、人手が足りないのよ。持ってい
くのぐらいは女生徒がやらなきゃ。というわけでお待たせしました。コーヒー二つです」
 そう言って近藤さんがトレーに乗せたコーヒーをテーブルに置いたのだが、その彼女を
見て喜久が言った。
「もしかして、近藤さん?近藤小夢さん?」
「そうですけど、そう言うあなたは…まさか、鬼賀さん?」
「そう、鬼賀喜久よ。すっごい久しぶりーっ!」
 そうだった。この二人、中学時代に同じクラスになったことがあったんだ。その時俺は
別の組だったから彼女たちが親しかったのかどうかはわからないが、少なくともお互いの
ことを覚えているというのははっきりした。そして、近藤さんが喜久に言う。
「本当に鬼賀さんなの?お久しぶりね」
「ええ、本当に。そういえば健くんたちと同じクラスだったのよね。ここの喫茶店、すご
い大入りじゃない?」
「そうなのよ。東くんたちのおかげで、繁盛してるわ」
「いや、俺はそんなに活躍は…。俺よりも、あいつの功績が大きいと思うよ」
 そう言って俺は、別のテーブルで女の子と談笑している仁に視線をやった。それに呼応
するように近藤さんが言った。
「それはそうかもしれないわね。こういう形のお店にするって提案したのも間くんだし」
「まったく、高校の文化祭でこんなお店開くなんて…。ちょっとお仕置きが必要かしら。
またチョップ入れちゃおうかな」
「こらこら喜久」
 俺は軽いツッコミを入れてみた。言われた喜久が軽く笑う。
「ふふっ、冗談だってば」
「あの…鬼賀さんと間くんって、付き合ってるの?」
 近藤さんが喜久に聞いた。
「えっ?ううん、別にそういうんじゃないわ。ただのお友達よ。それより、そんなこと聞
くなんて、あなたこそ仁くんに気があるの?」
「わ、わたしこそ、そういうんじゃなくて…」
「あーっ、思い出した!」
 それまで喜久たちの話を聞いていた克美さんが急に声を上げた。
「近藤さんって、修学旅行で健吾くんと二人で自由行動した女の子だーっ!仁くんからの
メールに書いてあったーっ!」
 そうだ、一月半ほど前に行った修学旅行でそんなことがあったんだ。しかもそのことを
仁にちくられている。近藤さんと行動する際にやましい気持ちがあったわけじゃなったけ
ど、やっぱりその娘と克美さんが出くわすというのは、俺にとっては喜ばしいことじゃな
い。で、いきなりこんなことを言われた近藤さんが俺に聞いた。
「鬼賀さんにばかり気を取られて気がつかなかったけど…東くん、この娘は?」
「あーっ…俺の知り合いで克美さんっていって…」
「知り合い?どーしてそんなあいまいな言い方するの?ちゃんと言ってよー!」
 なんか、また克美さんが怒り出してきた。かと言って、こんな所で近藤さんに事実を言
うのも恥ずかしい。俺がそんなことを思っているとー。
「あーっ、健吾の彼女が来てるー!」
 突然、そんな声が聞こえた。言ったのはクラスメイトの男子。しまった、修学旅行の時
に、仁が所有してた克美さんの写真を同じ部屋になった連中に見せてたんだっけ。そして
その声を聞いて、他の男たちや厨房の方にいた女の子までもが外に出てきて俺たちに注目
した。俺は小さく言う。
「ば…ばれた…」
「いーじゃないばれても。男の子たちはボクのこと知ってたんでしょ?」
「それはそうですけど…でも、やっぱりこんな風に見せ物みたいになるのは…」
「いーじゃない、見せ物で。ボクは構わないよ」
 だから、克美さんがよくても俺は…。俺がそんなことを思っていると、克美さんの隣に
いた喜久が自分の右手を手刀の形にした。そしてー。
「当て身」
(トスッ!)
 なんと、手刀を克美さんの首筋に叩き込んだんだ。
「きゃうん!?」
 そんな声と共に、克美さんは気絶した。おいおいマジかよ…。って言うか、今のは「当
て身」か?俺がそんなことを思っていると、聞いてもいないのに喜久が解説を始めた。
「最近お父さんに教えてもらった技なのこれ。軽く入れただけだから心配はないわ」
「心配ないって…完全に気を失ってるんだけど…」
「平気平気。それじゃわたし、克美さん連れてもう行くわ。健くん、ウェイターがんばっ
てね」
 そうして喜久は気絶した克美さんを背中に背負い、コーヒー代を払って教室を出ていっ
た。俺は呆然としていたが、それはこの教室にいた大半の人間も同じだった。そんな中、
仁一人がうんうんとうなずいていた。それで俺は仁の所に行き、たずねた。
「おい仁、おまえ何を納得したようにうなずいてんだよ?」
「いや、あの技くらったら克美さんがダウンするのも当然だって思ってな」
「なんでそう思うんだよ?」
「なぜなら、俺もあのチョップで気絶したからだ。もっとも、俺は四発耐えて五発目で倒
されたんだけどな」
「…五発もチョップくらうなんて、おまえいったい彼女に何したんだよ?」
 俺は仁と喜久がどこまで行っているのか謎に思い、そしてそれとは別に、今日家に帰っ
たら克美さんが怖いかもとも思ったのだった。

「文化祭、お疲れ様でした!かんぱ〜い!」
 文化祭が終わった。俺たち漫画部の面々は、似顔絵描きをした教室で打ち上げパーティ
をしている(もちろんアルコールはなし)。みんな思い思いに飲み食いやおしゃべりなん
かをしているが、部長がこんなことを言ってきた。
「それにしても、今年は盛況だったよなあ。去年とは大違いだ」
「まあ、去年が入らなさ過ぎたってのもあるけどな」
「そ、それは確かに…。でも今年はその去年を大きく上回った!誰のおかげだ?」
「みんなのおかげだ!」
「その通ーり!」
 酒が入ってるわけでもないのに、テンションが高くなっている人が多い。特に部長を始
めとした3年生たちは、最後の文化祭を成功で締められたことが嬉しいのだろう。そんな
中、女生徒で固まっているグループにいた香菜ちゃんが、急に席を立って教室の外に出て
いった。それを見て俺は、隣で静かにジュースを飲んでいる柳沼に言った。
「おい柳沼、結局、香菜ちゃんと二人でいて、何か言ったか?」
「それが、やはり落ち着いて話をする時間的余裕がございませんでして…」
「そうか。なら、今がチャンスだ。今、彼女は一人だ。おまえも香菜ちゃん追いかけて、
外行ってこい」
「ですが、彼女はどこに…」
「トイレだろ、きっと」
「そ、そうなりますと、僕が女子トイレに行くわけには…」
「誰が中まで入れって言った!出入り口前で待ってりゃいいだろ。ほらほら、早くしねえ
と戻ってきちまうぞ」
「わ、わかりました。それでは、行ってまいります」
 こうして柳沼も教室を出ていった。俺はそんな柳沼に、心の中でがんばれと言った。
「おいみんな、聞けぇ!…って、何人かいないな…。まあいい、ここで重大発表だ!」
 部長が全員の注目を集めるような言い方で言った。
「大半の部と同様、今日の文化祭をもって、3年生は引退をする。それで、部長の俺もい
なくなるので、新しい部長を決める必要がある。この部では、現在の部長が下の学年の人
間の中から指名するのが通例になっている。というわけで指名するぞ」
 そう言うと部長は辺りを見回してとある人間を指差し、言った。
「新しい部長は、おまえだ、東」
「お、俺ぇ!?なんでぇ!?」
 青天の霹靂とも言うべき指名だった。俺がうろたえていると、部長が言う。
「東は、2年生の中で一番熱心に部活に出てきている。だから指名した」
「けど、出るようになったのは今年に入ってからで、1年の時はかなりさぼってたし…」
「その時も、出てなくても熱心に漫画描いてたのはよく知ってるぞ。それじゃあ決を取る
ぞ。東が次期部長でいいと思う人!」
 部長が言うと、その場にいた、俺を除く全員が手を上げた。引退する先輩たちも含めて
だ。
「ちょっと待ってくださいよ〜、俺そんな器じゃないっスよ〜!」
「いーや、器だ。だからこそ全員承認したんだろ」
 もう観念しろと言わんばかりの部長の言葉だった。その時、外に行っていた香菜ちゃん
と柳沼が戻ってきた。二人一緒にだ。彼女たちがどうなったか気になるが、それよりもま
ずは自分のことだ。香菜ちゃんには悪いが、俺は部長にこう言った。
「そ、そうだ!俺が部活に出てくるようになったのは、香菜ちゃんの影響なんだ!だから
俺よりも彼女を部長にするべきですよ!事実、漫画部の出席率に関しては、香菜ちゃんの
方が高いし…」
「ダメだ。さっき下の学年から指名と言ったが、正確には引退せず残った中で最上級生か
らの指名だ。だから、2年生全員いなくなったら桂でもいいけどなあ」
 無慈悲な部長の言葉だった。そしてそれより、香菜ちゃんが状況を把握できていない。
「あの…いったい何の話なんですか?」
「実は俺が次の部長に指名されちゃって…。俺なんかより適した人間がいるのに…」
「東さんに白羽の矢が立てられたということでございますか。他の方々に信頼されている
ということなのでございますから、喜ばしいことではございませんか」
 柳沼が言った。白羽の矢か…。俺にしたら、その矢が心臓に突き刺さってる感じなんだ
けど…。俺がそんなことを思っていると、部長が柳沼にたずねた。
「じゃあ、柳沼は東が次の部長でいいってことだな?」
「はい、問題はございません」
「それじゃ、桂は?」
「わたしも、東センパイが適任だと思います」
 この裏切り者ー!…と俺は心の中で叫んだ。いや、別に最初反対してたのが賛成に回っ
たわけじゃないから裏切ってはないんだけど…。ともかく、これで俺は孤立無援になって
しまった。それで俺はいよいよ腹をくくった。
「わかりましたよ!やればいいんでしょやれば!その代わり、部長権限で副部長を指名さ
せてもらいますよ!」
「おお、やってくれるか!よし、これで俺の後任が決まったな。で、副部長って誰を指名
するんだ?」
「香菜ちゃん、柳沼、お願いしていいかな?」
 俺が言うと、二人とも驚いた顔をした。
「わたし…ですか?わかりました、わたしがセンパイが部長になった要因の一つになって
いるのであれば、手伝います」
「僕も微力ながらお手伝いいたしましょう。東さんには、恩ができましたし」
 恩って何のことだ?俺はそう思ったが、ともかく二人とも快く了承してくれた。
「よーし、これで漫画部の新しい体制ができた。俺たちがいなくなってもがんばれよ。も
しつぶしたりなんかしたら、承知しねえぞ!」
 部長が言ったが、あんた二年前にアニメ研究会つぶしてるだろ。もっとも、その時はこ
の人に責任も権限もなかったのかもしれないが。それにしても、サポート二人ついてもら
うとは言え、俺に部長なんて務まるんだろうか…。そして俺はこの時、香菜ちゃんと柳沼
に何があったのか気にすることを、すっかり忘れていた。気がついたのは、打ち上げも終
わって家に帰り、いろいろあってふてくされていた克美さんをあやしている時だった。

 文化祭が終わって数日が過ぎた今日は11月23日。祝日のため学校が休みであるその
日、俺と克美さんは、まだ開店前の“鬼賀屋”にいた。実は今日ここで、ちょっとしたイ
ベントがある。
「喜久、誕生日おめでとう。これ、誕生日プレゼントね」
 俺はそう言いながらこの日のために買ったCDを彼女に渡した。そう、実は今日は喜久
の誕生日なんだ。勤労感謝の日に産まれた喜久がラーメン屋である自分の家の手伝いに熱
心になっているというのも、もしかしたら奇妙な縁かもしれない。
「ありがとう健くん。で、CDって…あら、マック原田のじゃない」
「この間みんなでカラオケ行った時、俺が歌っていい歌ねって君が言った曲が入ってるん
だ。これきっかけにこの人のこと好きになってくれたらいいなって思ってさ…」
「ふーん、なるほどねえ。それじゃ聞いてみるわ」
「喜久さん、誕生日おめでとう!ボクね、お祝いの手作りケーキ作ったんだ。今日はこれ
から出かけるみたいだから、後で食べてね」
「ありがとうございます。わあ、すごくおいしそう。それじゃ後でいただきます」
 と、喜久がそういった時、店の戸が開いた。そして入ってきたのは香菜ちゃん…と柳沼
だった。
「喜久さん、おはようございます。あっ、センパイと克美さん、いらしてたんですか?お
はようございます」
「おっはよー!」
「おはよう香菜ちゃん。今日はこれからここでバイトなんだよね?」
「はい、喜久さんが出かけられると言うので、今日は最初から最後まで…。あっ、遅くな
りました。喜久さん、誕生日おめでとうございます。プレゼントに、手作りのエプロンを
用意してみたんですけど…」
「あら、そんな物用意してくれたの?手作りなんて、手間じゃなかった?」
「大丈夫です。それと、今日はみなさんに報告したいことがあって、柳沼くんにも来ても
らいました」
「開店前に申し訳ございません。それに、本日は鬼賀さんのお誕生日ということですが、
何も用意できずに重ね重ね申し訳ございません。なにせ、桂さんにそのことを聞かされた
のが本日でしたものですから…」
「そんなこと気にすることないわよ。だって柳沼くん、これからこのお店の常連になって
くれるんでしょ?」
「そうだよねえ、香菜ちゃんが働いてるお店だもん、よく来ることになるよねえ」
 その喜久や克美さんの言葉からは、もう柳沼が何を報告しにきたのかわかっていること
がうかがえる。そりゃ、わざわざ二人でこの店に来たんだ、言わずともわかる。
「それでは、改めて報告させていただきます」
 柳沼が言った。
「先日、僕は桂さんより愛の告白を受けました。その言葉に対してしばらく回答を保留さ
せていただいておりましたが、文化祭の日に、その告白を謹んでお受けいたしますと、よ
うやく返答させていただきました。これによりまして、僕と桂さんは晴れて恋人同士と相
成りました」
 相変わらず柳沼の口調は固いが、ともかく二人がうまく行ったということだ。これを聞
いた克美さんと喜久が言う。
「香菜ちゃん、柳沼くん、おめでとー!」
「よかったわね二人とも。この店的にも、常連さんが増えたってことで嬉しさ二倍よ」
 相変わらず商売っ気のあることを言う喜久だが、俺はその彼女に言った。
「これで俺と克美さん、香菜ちゃんと柳沼がカップルになって、残るは君だな、喜久」
「そうね。でも、なかなかわたしにぴったりの素敵な男の人がいなくてねえ」
「今から来るじゃない、その最有力候補が」
 克美さんがそう言った時、また店の戸が開いた。
「バラの花束と共に、間仁、ただいま参上!喜久さん、誕生日おめでとーうっ!」
 たくさんの真っ赤なバラを手にして、仁が入ってきた。
「うわあ、すごいきれいね。どうもありがとう」
 差し出された花束を受け取って喜久がそう言うと、仁が返答する。
「君の美しさに見合う花を探すのは、本当に大変だったからね。さあ、それじゃ出かけよ
うか。俺が、忘れられない最高の誕生日にしてあげるよ。…ん?」
 と、ここでようやく仁が俺たちに気がついたようだ。遅過ぎるよと思ったが、今日のこ
いつにとって喜久以外は背景以下と言うべき存在なのかもしれない。
「健吾は喜久さんの幼なじみだから来るのもわかる。克美さんは健吾の彼女で喜久さんの
友達でもあるから同様だ。香菜ちゃんにいたってはこれからこの店で喜久さんの分まで働
くからいて当然だ。だが…」
 仁が柳沼を見て言った。
「なんでおまえがこの店にいるんだあ!客として来るにも、まだ開店前だろうがあ!」
「確かに僕がここにいるのはいささか不自然かもしれませんが、だからと言ってそこまで
大声でなじられる覚えはございません。それに僕は桂さんに言われてここに来たのでござ
います」
 柳沼は冷静に答える。
「香菜ちゃんにだぁ?あっ、まさかおまえら、くっついたのか!?」
 その仁の言葉は正解だったが、その直後、仁は頭を抱えて言った。
「俺より先に、香菜ちゃんに恋人ができるなんて…しかもよりによってその相手が、この
柳沼だなんて…なんてこったぁ〜!」
 そんなにショックかと俺は思った。しかもよく聞くと、香菜ちゃんと柳沼の両方に失礼
なこと言ってるぞこいつ。そして頭を抱え続ける仁の背後に、手を例の“武器”の形にし
た彼女が忍び寄る。
「いつもでもショックを…受けてない!」
(ポカーン!)
 仁の後頭部に、喜久のチョップが入った。前のめりになる仁に、彼女は言う。
「今日は最高の誕生日にしてくれるんでしょ?もしかしたら、今日友達から恋人になる可
能性もあるのに」
「えっ、それ本当!?」
「あなたのがんばり次第ではね」
 喜久にこう言われた仁の背後に、炎が燃え上がるのが見えた気がした。そしていきなり
笑い出す。
「ふっ…ふふふふ…はっはっはー!そーだ!この俺は間仁、天下無敵のスーパーガイだ!
行こう喜久さん、俺たちの幸せの幻想曲を奏でに!」
「言ってることがよくわからないけど…まあいいわ、とにかく出かけましょう。それじゃ
香菜ちゃん、後はお願いね」
「はい、行ってらっしゃい喜久さん」
 こうして喜久と仁は出かけていった。その後、克美さんが言う。
「…仁くんって、テンションの上下が激しいよね…」
「そうですね。僕にはなぜあそこまで感情に起伏が起きるのか理解いたしかねますです」
 柳沼が言ったが、おまえは逆にもう少し感情を表に出せよと俺は思った。
「ともかく…」
 香菜ちゃんが口を開いた。
「わたしと柳沼くんがうまく行ったのは、東センパイのおかげである部分が大きいと思い
ます。本当にありがとうございました」
「僕からもお礼を言わせていただきます。ありがとうございました」
「俺はそんなたいしたことはしてないよ。最終的に気持ちを伝え合ったのは当人同士なん
だし…。それより二人とも、これから一年、漫画部長としての俺のサポートを頼むよ」
「そっか、健吾くん、部長になったんだよね。大変だろうけど、がんばってね」
 克美さんが言ってくれた。そうだ、これからは今まで以上にいろいろなことが起きるは
ずだ。そしてそれは俺一人では乗り越えられないかもしれない。だけど、ここにいる克美
さんや香菜ちゃん、さらには今回の件で親しくなった柳沼、そして今は出かけている仁や
喜久が一緒なら、きっと大丈夫。俺たちには、愛情と友情がある。

<第七章了 第八章に続く>
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