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(照明がつくと舞台中央で小山田が体育座りをしている) |
小山田: |
あーあ、暇だなあ…。サークルやめちゃったし、何にもする気が起きないんだよなあ…。またどこか別のサーク
ルにでも入ってみようかな。(立ち上がって歩き出す) |
氷室: |
(歌いながらスキップで出てくる)ジャカジャカジャン、ジャカジャカジャン、ジャカジャカジャカジャカジャ
ン、イェイ、ジャカジャカジャン、ジャカジャカジャン、ジャカジャカジャカジャカジャンケンポーン!(小山
田とすれ違う瞬間、チョキを出す) |
小山田: |
(思わずパーを出してしまう) |
氷室: |
勝ちーぃ!(勝ち誇った顔をし、そのまま去ろうとする。立ち止まって物陰に隠れる) |
小山田: |
何だろう、今の人…。 |
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(小山田、去ろうとするが、物陰から氷室が吹き矢を吹くまねをする) |
小山田: |
いたっ! |
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(小山田、氷室の方を向くがそれに合わせ氷室は顔を背ける。腑に落ちない顔で小山田が去ろうとすると、また
吹き矢) |
小山田: |
つっ! |
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(小山田が振り返ると、さっきと同様に氷室は顔を背ける。小山田、さっきと同じような腑に落ちない顔をして
去ろうとする。氷室、ピコピコハンマーを取り出し小山田に忍び寄る。ハンマーで小山田の後頭部を叩く) |
小山田: |
いたっ!ちょっと何する…。(振り返ると、今度は額を叩かれる)いたっ! |
氷室: |
違うなあ…。(反対方向に去ろうとする) |
小山田: |
ちょっと待ってくださいよー! |
氷室: |
何か? |
小山田: |
見ず知らずの人間をいきなりピコピコハンマーで殴っといて何かはないでしょう!いったい何なんですかあなた
は!もしかして新手の当たり屋ですか!? |
氷室: |
当たり屋と言うと、長靴の形をしていてスパゲッティがうまい…。 |
小山田: |
それはイタリアでしょう!(体当たりのツッコミ) |
氷室: |
はっ! |
小山田: |
何ですか? |
氷室: |
いや、いいツッコミだなと…あっ、すまんすまん。くだらないギャグを言ったり、それに対する反応を楽しんで
しまうという、そーゆー人間なんだ、俺は。 |
小山田: |
はあ?まあいいや、早く向こう行っちゃってください。 |
氷室: |
うむ、それでは。(去ろうとする) |
小山田: |
まったくもう…。(氷室と反対方向に去ろうとする) |
氷室: |
(戻ってきて、小山田を背後からはがいじめにする)ふわーっはっはっは、もう逃がさんぞー! |
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(間) |
小山田: |
うわーっ、人さらいだー!いーのーちーだーけーはーおーたーすーけーをー!(暴れる) |
氷室: |
こら、人さらいだなんて人聞きの悪いことを言うな! |
小山田: |
だっていきなりこんなことして…。 |
氷室: |
まあ聞け!(小山田を解放する)俺はな、そこら辺を歩いている適当な人間を無理矢理拉致監禁して、俺が部長
をしているサークルに強引にでも入れてしまおうと、そーゆー魂胆だったんだ。 |
小山田: |
拉致監禁って…やっぱり人さらいじゃないですか!は?サークル!? |
氷室: |
そーおだ!そしてそれを知ってしまったからには君も僕たちの仲間。さあ、この胸に飛び込んでおいで!(腕を
広げる) |
小山田: |
…誰が入るなんて言いましたか? |
氷室: |
言わなかったかね? |
小山田: |
言ってません。だいたい、何のサークルかわからないのに入れるわけないでしょう。 |
氷室: |
それもそうだな。じゃあ、教えれば入ってくれるってことか! |
小山田: |
わかりませんよ。興味があれば入るかもしれませんし…。何なんです? |
氷室: |
演劇のサークルだ! |
小山田: |
この大学の演劇サークルっていうと…ああっ、2DK! |
氷室: |
CDKだ。クラッシャーオブドラマコンテストの略称だ。 |
小山田: |
なるほど…って、はあっ!?クラッシャーオブドラマコンテストって、直訳したら演劇発表会の壊し屋って、そ
ういう意味じゃないですか!しかも、コンテストだったらKじゃなくてCでしょう。 |
氷室: |
そんなことは知らん。俺が入った時にはもうすでにこの名前だったんだからな。 |
小山田: |
変なサークルだ…。 |
氷室: |
それで、入ってくれるのか、どうなんだ? |
小山田: |
うーん…。それにしても、どうしてこんな時期に勧誘やってるんですか? |
氷室: |
いい質問だ。実はな、部員不足でまともな演劇がうてない状況なんだ。 |
小山田: |
はあ、それは大変ですね。部員不足って、今何人ぐらいいるんですか? |
氷室: |
俺一人だ。 |
小山田: |
嘘ー!?本当に!? |
氷室: |
冗談だ。 |
小山田: |
(こける)あのね…。 |
氷室: |
本当は実質的な活動をしているのは五人だ。 |
小山田: |
それでもかなり少ないですね…。 |
氷室: |
そうだろう?だから君を勧誘してるんだよ。君のツッコミのタイミングは素晴らしい。ぜひ俺とコンビを組んで
だなあ…。 |
小山田: |
それじゃあ演劇じゃなくて漫才になっちゃうじゃないですか。 |
氷室: |
そんなことは構わん。さあ、入るのか入らないのか!? |
小山田: |
そんな急に言われても…。 |
氷室: |
ところで、君はどこかのサークルに所属しているのかね? |
小山田: |
いえ、今はフリーです。つい最近まで文芸部に入ってましたけど、やめちゃいました。 |
氷室: |
文芸部!それならば劇団に入って脚本を書くというのも、君の才能を活かせるのではないかな? |
小山田: |
なるほど…。 |
氷室: |
それにな、実を言うと現在男子部員は俺一人しかいないんだ。だから、君が入ったとしても男は二人で、男一人
につき女の子二人という計算になる。しかも、俺は同じサークルの女の子に手を出すつもりはない。 |
小山田: |
ホモですか? |
氷室: |
違う!俺はな、サークル外にちゃんと彼女がいるんだ! |
小山田: |
へえ、そうなんですか。 |
氷室: |
なんだその顔は?信じてないのか?とにかく、君がCDKに入れば、いわゆるハーレム状態だぞ! |
小山田: |
…今の僕は、そういうのには興味ないんです。 |
氷室: |
なんだ、君こそホモか? |
小山田: |
ち、違います!実は、つい最近彼女に振られてしまいまして…。それで、しばらくは…。 |
氷室: |
それはお気の毒だな。あっ、そういえばある男が彼女に振られたショックで夜の校庭をドナドナ歌いながらさま
よい歩いたと聞いたが、それは君だったのか! |
小山田: |
あーるーはれたーひーるーさがりー…って、そんなことしませんよ! |
氷室: |
なんだ、君じゃなかったのか。 |
小山田: |
何も彼女に振られたのは僕だけじゃありませんよ。 |
氷室: |
それもそうだ。それで、入部の件だがどうかね? |
小山田: |
そうですねえ。ハーレム状態はともかく、どうせ無所属で暇を持て余していたところですし…。 |
氷室: |
うんうん。 |
小山田: |
わかりました、入りましょう。 |
氷室: |
本当かね!? |
小山田: |
ええ。でも、僕は演劇に関しては全くのド素人ですから、ちゃんと教えてくださいよ。 |
氷室: |
やだ。 |
小山田: |
そ、そんなあ〜。 |
氷室: |
…冗談だ。それにしても、ちょっとの説得で済んでよかった。 |
小山田: |
そうですね。 |
氷室: |
説得してダメだったら、腹を切ろうかと思っていたんだ。 |
小山田: |
それは切腹でしょう!(思いっきりツッコむ。前のめりに倒れる氷室) |
氷室: |
(起き上がって)ふわははは、やはり君のツッコミはいい! |
小山田: |
そうですか?(一人でツッコミの練習を始める。それがだんだん大きくなる) |
氷室: |
ああ、もうそれくらいでいいから!そういえばまだ名前を聞いていなかったな。何というのだ? |
小山田: |
僕は一年の小山田二郎です。みんなからは、親しみを込めてオヤジーと呼ばれています。 |
氷室: |
親父か。見たまんまだな。 |
小山田: |
そういう意味だったのか…。 |
氷室: |
俺は二年の氷室達也だ。言っておくが、小室哲也とはなんの関係もないぞ。 |
小山田: |
誰も聞いてません。だいたい、そんなにカッコよくないでしょう。 |
氷室: |
君、そんなことを言ったら本人や小室ファンに失礼じゃないか! |
小山田: |
(こける)‥‥‥‥。とにかく、よろしくお願いします。 |
氷室: |
うむ、よろしくな。さて、それではさっそく行こうか。 |
小山田: |
行くって、今日劇団の活動やってるんですか? |
氷室: |
いや、やってないよ。 |
小山田: |
だったら、どこに行くんです? |
氷室: |
それはなあ、君にこのサークルでの初仕事をやってもらうのだ。別にここでもいいのだが、なるべくならば人目
のない所でと思ってな。 |
小山田: |
いきなりですか。でも、ここもあんまり人がいませんよ。ここでもいいんじゃないですか? |
氷室: |
ふーむ、言われてみれば確かにそうだな。いいだろう、君の初仕事は…この俺の必殺技の実験台になってもらう
ことだー!…ニヤリ。 |
小山田: |
えっ…? |
氷室: |
きええええええ!(ハンマーで小山田に殴りかかる) |
小山田: |
うわあっ!?(避ける)ちょっと、何するんですか!? |
氷室: |
心配するな。君も劇団員の一人。死に至らしめるようなことはしない。やあっ! |
小山田: |
うわあ!(避ける)そういう問題じゃないでしょう!何ですか必殺技って!? |
氷室: |
だいじょーぶ、これは言わば儀式だ。このサークルに入るために、誰もが通った道なのだ! |
小山田: |
誰も通ったって、女の人も? |
氷室: |
いや、女の子にはしてないな。男だけだ。まあそんなことはどーでもいい!さあ、この洗礼を受けるのだ! |
小山田: |
その洗礼を受けた男子部員はどうなったんですか?みんなやめちゃってるじゃないですか! |
氷室: |
問答無用、チェストォ! |
小山田: |
うわあっ!(避ける) |
氷室: |
おのれ、ちょこまかと逃げおって! |
小山田: |
誰だって逃げますってば! |
氷室: |
あっ!(明後日の方向を指さす) |
小山田: |
えっ?(指さした方を見る) |
氷室: |
(小山田をはがいじめにする)ふわーっはっはっは、ひっかかったな! |
小山田: |
ちょっと、何するんですか!? |
氷室: |
ふはははは、君はこれからCDKの改造劇団員になるのだ! |
小山田: |
改造!? |
氷室: |
だいじょーぶ、痛くないからね〜。 |
小山田: |
痛くないとかそういう問題じゃ…うわーっ、誰か助けてー!(二人退場) |
小山田: |
何ですかこのリアルなマネキン…ぎぃぃぃぃやぁぁぁぁっ! |
氷室: |
ふわーっはっはっはっはっはっはっは!(オチの音楽の後暗転、END) |
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