タイトル
 「ねこここここ!」
登場人物
 猫娘&兎娘(一人二役)
 青年
 博士

      (にゃーにゃーという鳴き声の後に照明がつく。ダンボール箱の中に猫娘がいる)
 青年: (出てくる。最初は猫娘に気づかないが、気がついてずっこける)何じゃこりゃあ!?す…て…ねかこれは?そ
れで、こ…?(箱には「すてねこ」と書いてあるが、ねの字だけ逆さまになっていた)
 猫娘: 捨て猫にゃ。拾ってにゃ。
 青年: にゃ…にゃ!?しゃべった!?猫がしゃべ…ちょっと待て。そもそもこいつは猫か?
 猫娘: 猫にゃ。でも半分人間にゃ。
 青年: は、半分人間!?落ち着け、落ち着け、俺。うーんと、こういう時にはいったいどうすればいいのか…。そーお
だ、寝ちまえ、はーっはっはっはっは!というわけで、おやすみ!(寝転がる)
 猫娘: (箱から出る)こんにゃ所で寝てると風邪ひくにゃ。
 青年: 黙っててくれ。俺は現実逃避したいんだ。
 猫娘: それじゃにゃーにゃも寝るにゃ。おやすみにゃさ〜い。(丸まる)
     (間)
 青年: (起きる)‥‥‥‥。いるよ、やっぱり…。夢じゃねえんだな…。おい、こんな所で寝てると風邪ひくぞ。
 猫娘: (起きる)猫はめったにゃことじゃ風邪ひかにゃいにゃ。
 青年: あー、さいですか…って、猫を自称するおまえはいったい何者だよ、おい?
 猫娘: 猫と人間のハーフ…かにゃ?
 青年: な、何だって?いわゆる獣人というヤツか?…って、信じられるかいそんなこと!ほら、この耳だって作り物な
んだろう、ええっ!?(猫耳を引っ張る)
 猫娘: 痛い、痛いにゃ!やめるにゃ!!
 青年: ほ…本物!!
 猫娘: そうにゃ。
 青年: じゃあ、顔の横についてるその耳はなんだ?おまえ、耳が四つあることになるじゃないか。
 猫娘: こっちのが作り物にゃ。
 青年: じゃあ、引っ張ろうが何しようが痛くないんだな〜。(耳を引っ張ろうとする)
 猫娘: や、やめるにゃ!作り物でも痛いもんは痛いにゃ!
 青年: 何だそりゃ?
 猫娘: 博士がそういう風にしちゃったにゃ。
 青年: 博士だあ?
 猫娘: にゃーにゃをこんな風にした博士にゃ。
 青年: おまえ、にゃーにゃっていうのか?
 猫娘: そうにゃ。でもにゃーにゃ、博士に捨てられちゃったにゃ…。
 青年: 捨てられた?そりゃまたどうして?
 猫娘: 話せば長くにゃるにゃ…。
 青年: こうなったら乗りかかった船だ。とことん付き合ってやろうじゃねーか。話せよ。
 猫娘: 博士、ただの人間だったにゃーにゃを猫と合体させたにゃ。だけど、失敗作だって言ってにゃーにゃのこと捨て
ちゃったにゃ。
 青年: ふんふん、それで?
 猫娘: 終わりにゃ。
 青年: ぜっんぜん長くねーじゃねーか!
 猫娘: ふみゃあ!ごめんにゃさーい!(小さくなって震える)
 青年: あっ、悪かった。もう怒らないから…。
 猫娘: ほんとに?
 青年: ほんとに。
 猫娘: よかったにゃー。
 青年: しっかし、おまえって本当に猫だな。その手も本物か?
 猫娘: そうにゃ。にくきう、触ってみるかにゃ?
 青年: にくきう?ああ、肉球か。どれどれ…。ぷにぷにして、本物の肉球だな…。
 博士: にゃーにゃー!(飛び出してくる)
 猫娘: あっ、博士。
 博士: (猫娘を抱きしめる)にゃーにゃ、私が悪かった!もう捨てたりしないから、一緒に帰ろう!
 猫娘: 博士、苦しいにゃ。
 博士: おお、すまん。
 青年: おい、あんたがにゃーにゃを作った博士か?
 博士: ん?そうだが?
 青年: じゃあ、こいつの話は本当だったのか…。
 猫娘: にゃんにゃ、信じてにゃかったのかにゃ?
 青年: まあな…。ところであんた!
 博士: 何かな?
 青年: 自分の都合でにゃーにゃを改造して、気に入らないから捨てたり、かと思えば拾いにきたり、ちょっと勝手過ぎ
やしないか?
 博士: まあ、そのことは反省している…。ん?
 青年: 何だよ?
 博士: おまえはー!まさかこんな所で出会えるとは!
 青年: あんた、何言ってるんだ?
 博士: 思い出すのだ、この私を!
 青年: (考える)あーっ!
 博士: そうだ!その通りだ!
 青年: 誰だっけ?
 博士: (こける)ベタベタじゃないか!
 青年: そんなこと言われたって、思い出せないもんは思い出せないし…。あれ?そうか!おまえ、高校の科学部で一緒
だった…。
 博士: そうだ!
 青年: 天才的な頭脳を持つ、自称…。
 博士: うんうん!
 青年: マッチョサイエンティスト!
 博士: フー!(ポージング)…って、誰がマッチョだ!マッドサイエンティストだ!
 青年: 自分のことをマッドサイエンティストって言うヤツ、普通はいないんじゃないの?
 博士: うるさい!
 青年: しっかし、人間と猫を合体させるなんてとんでもないことをしでかしたな。
 博士: ふふふ、これも世界征服の第一歩だ。
 青年: おいおい、まだそんなこと言ってるのか?おまえ、歳考えろよ。
 博士: 黙れ!このにゃーにゃはなあ、猫の特性を持った人間なのだぞ!
 猫娘: えっ、にゃーにゃにそんにゃ能力があったのかにゃ?
 青年: 猫の特性と言うと…素早い動き!
 猫娘: にゃーにゃ遅いにゃ。
 青年: 高い所から飛び降りて、ちゃんと着地できる!
 猫娘: トランポリンもできにゃいにゃ。
 青年: じゃあ、暗闇でも見える光る眼…。
 猫娘: 真っ暗になったらにゃんにも見えにゃいにゃ。
 青年: 百歩譲って、猫舌…。
 猫娘: 熱い物大好きにゃ。
 青年: じゃあ何なんだよ!?
 博士: バカ者!猫の特性と言えばかわいいことだろうが!
     (間)
 青年: …それだけ?
 博士: それだけだ!
 青年: …それでどうやって世界征服を?
 博士: 各国の首脳の元に猫娘を送り込み、このかわいさで骨抜きにしてしまうのだ!
 青年: …おまえバカ?いや、おまえバカ。
 博士: 何だと!?にゃーにゃを生み出すために私がどんな苦労をしたと思っているのだ!
 青年: どんな苦労をしたんだ?
 博士: まずはベースとなる美少女をだなあ…。
 青年: あっ、いい物があった。ほーらにゃーにゃ、ネコジャラシだよー。
 猫娘: うにゃにゃにゃうにゃにゃ!
 博士: 次に数多くの猫の中から最もかわいい猫を…。
 青年: ほーら、マタタビマタタビ。
 猫娘: ふみゅ〜…。
 博士: 人の話を聞けい!
 青年: あっ、ごめんごめん。にゃーにゃがあんまりかわいいもんだから…。
 博士: ふふふ、そうだろう。にゃーにゃのかわいさには勝てまい!はーっはっは!
 青年: …って、なんでおまえが得意になる?
 猫娘: (顔をなでる)
 博士: はっ、まずい!
 青年: 何だ?
 博士: 明日は雨だ。(青年ずっこける)あっ、ずっこけたな!
 青年: あまりにもアホらしいから…。
 博士: アホだと!?言ったな!許せん!にゃーにゃ、やってしまえ!
 猫娘: にゃ?やるって?
 博士: そいつをやっつけろ!
 猫娘: そんにゃことできにゃいにゃ。この人、にゃーにゃと遊んでくれたいい人にゃ。
 青年: そうそう。それに、にゃーにゃに人をやっつける力はないんだろう?
 博士: 一つだけあるのだ。強力な武器がな!
 猫娘: そんにゃ物あったのかにゃ?
 博士: さあにゃーにゃ、このシラス干しを食べるのだ!
 猫娘: えっ、でもぉ…。
 博士: いいから食べるのだ!また捨てるぞ!
 猫娘: そんにゃの嫌にゃ!わかったにゃ、やるにゃ。(食べる)にゃ!?
 青年: にゃーにゃ!?
 博士: ははは、そいつを食べると、パワーアップの上に性格が攻撃的になるのだ!さあ、そいつをやってしまえ!
 猫娘: ふみぃー、猫手パーンチ!(青年を殴るがまるで威力がない)
 青年: ‥‥‥‥。
 猫娘: にゃにゃにゃにゃにゃ!(連続でパンチするも全く効果なし)
 青年: ‥‥‥‥。
 猫娘: にゃ…あれ?(攻撃をやめる)
 博士: しまった、時間切れだ!
 青年: 一分ももってねーじゃねーか!しかもぜんぜん弱いし!
 猫娘: にゃーにゃ、にゃにしてたにゃ?
 青年: あんまり意味のない行動だったから気にしなくていいよ。
 博士: むうっ、こうなれば仕方がない。逃げる!ほなさいならー!(退場)
 猫娘: 博士ー、待つのにゃあー!(退場)
 青年: にゃんにゃんだかにゃあ…。ん?おっと、移っちまったな。…帰ろうっと。(去りかけたところで暗転)
     (ぴょんぴょんという鳴き声の後に照明がつく。ダンボール箱の中に兎娘がいる)
 青年: (出てくる。最初は兎娘に気づかないが、気がついてずっこける)何じゃこりゃあ!?今度は兎!?
 兎娘: 捨て兎ぴょん。拾ってぴょん。
 青年: (頭を抱える)
 博士: (出てくる)はーっはっは!私の作品その2だ!こいつはかわいいだけじゃないぞ!
 兎娘: ぴょんぴょん!
 青年: あのさあ…猫娘がにゃーにゃー言うのはいいとして、兎娘がぴょんぴょん言うのはどうかと思うんだよね…。
 博士: なぜだ!?
 青年: だって、ウサギってぴょんぴょんって鳴くわけじゃないんだし…。
 博士: (はっとする)しまったー!くそう、覚えてろよ!(逃げるように退場)
 兎娘: ぴょんぴょんぴょーん!(兎跳びで退場)
     (間)
 青年: (絶叫)こんなオチでいいのかー!?(オチの音楽の後に暗転、END)

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