|
|
(暗闇の中でチャイムが鳴る。その後明かりがつく。場所は青年のアパート) |
青年: |
(奥から出てくる)はいはいはいはい、どちら様ですか? |
姉貴: |
(玄関の外から)あたしよあたし。あんたのお姉さんよ。 |
青年: |
何だ姉ちゃん、久しぶりだな。いいぜ、入ってきても。 |
姉貴: |
んじゃお邪魔しま〜す。 |
|
(玄関から猫耳&しっぽをつけた姉貴が入ってくる) |
青年: |
ぶーっ!?何じゃこりゃあ!?なんでそんな物つけてるんだあんた!? |
姉貴: |
どう、似合う? |
青年: |
似合うとか似合わないとかじゃなくってなあ、歳考えろ、29歳もうすぐ三十路の独身女性! |
姉貴: |
独身で悪かったわね!言っておくけどね、あたしには結婚を前提としてお付き合いしてる人がいるのよ。 |
青年: |
ならなおさら猫耳はやめろ!相手の男性が何て言うよ!? |
姉貴: |
ほーっほっほっほ、そのことなら大丈夫。だってあたしをこんな風に改造したのその彼だもん。 |
青年: |
か、改造だって!?…姉ちゃん、ちょっとごめん。(姉貴の猫耳やしっぽを引っ張る) |
姉貴: |
いたたたた!やめなさいよ!神経通ってるんだから! |
青年: |
ほ、本物!? |
姉貴: |
そう、これは本物の耳としっぽよ。彼がつけてくれたの。 |
青年: |
年増の女性にこんなことするなんて、いったいどんな男なんだ…。 |
姉貴: |
うーんとねー、自称マッドサイエンティストの怪しい科学者。自分で作った猫の女の子と暮らしてるの。 |
青年: |
は?…まさかあいつかー!?(暗転) |
|
(明かりがつくと場面変わって博士の研究所。掃除をしている猫娘がいる) |
猫娘: |
ふふふふふーん、お掃除お掃除、お掃除にゃ〜。 |
|
(けたたましくドアがノックされる音) |
猫娘: |
はーい。(玄関の前に行き)どちら様でしょーかあ?新聞なら取ってますにゃあ。 |
|
(派手なアクションと共に青年が入ってくる) |
猫娘: |
うわっ!?びっくりしたにゃあ…。あーっ、この間の青年ちゃんだあ! |
青年: |
やあにゃーにゃ、久しぶり。 |
猫娘: |
青年ちゃん、今日はにゃにしに来たのにゃ?にゃーにゃと遊んでくれるのかにゃ? |
青年: |
いや、そうじゃないんだ。それに青年ちゃんって呼ぶな。俺には義人って名前があるんだから。 |
猫娘: |
はーい、わかりましたにゃ。それで義人ちゃん、ご用はにゃんですか? |
青年: |
おまえを作った博士に用があるんだ。いるかい? |
猫娘: |
博士ですか?ちょっと待ってください。(奥に呼びかける)博士ー、お客様ですにゃー! |
博士: |
(奥から出てくる)どうしたにゃーにゃ、誰が来た…。(青年に気づき)あー、おまえはーっ!…誰だっけ?
(青年こける。それを見た猫娘もまねしてこける) |
青年: |
て…てめーそれはこの間俺がやったネタだろうが! |
博士: |
必殺、ネタ返し。で、何の用かな?私は忙しいんだ。逃げ出した兎娘を捕獲しに行かなければならないんでね。 |
青年: |
兎娘?ああ、あの娘か。…って逃げ出したあ!?あんなのが人に見つかったら、そりゃもう大騒ぎだぞおい! |
博士: |
大騒ぎになってないってことはまだ見つかってないんだろう。ま、そんなわけで私は忙しいのだ。用があるんな
らさっさとしてくれ。 |
青年: |
それじゃ単刀直入に言うよ。てめー、俺の姉ちゃんを元に戻しやがれ! |
博士: |
君の姉さん?いったい誰のことだ? |
青年: |
しらばっくれるんじゃねーよ!いいだろう、連れてきてやる!(一度外へ。姉貴を連れて戻ってくる)ほら、こ
いつだこいつ! |
姉貴: |
ちょっと、姉に向かってこいつはないでしょう。 |
博士: |
何と、君のお姉さんとはこの女性のことだったのか!いやあ、世間って狭いなあ。 |
青年: |
狭かろうが広かろうがこの際そんなことはどうでもいいんだ!早く姉ちゃんの猫耳としっぽを何とかしろ! |
猫娘: |
義人ちゃん、猫娘は嫌いにゃんですかあ? |
青年: |
それとこれとは話が別なんだよ。いいかいにゃーにゃ、そういうことをするような場所でならともかく、普通に
生活する場でいい大人がこんなカッコしてたら、世間一般じゃ変人だと思われるんだよ。 |
猫娘: |
そんにゃ…にゃーにゃのこと変人扱いするなんて、義人ちゃんひどい…。(泣き出す) |
姉貴: |
あーらーらーこーらーら…。 |
博士: |
泣ーかした泣ーかした…。 |
二人: |
義人が泣ーかした…。 |
青年: |
うるさいよ二人とも!!あのねにゃーにゃ、別ににゃーにゃが変人ってわけじゃないんだよ。ただ、にゃーにゃ
を見た人は、おまえのことを変な目で見るだろう? |
猫娘: |
そんにゃことありません。お買い物とかに行くと、みんにゃ普通に接してくれます。 |
博士: |
この界隈では、こいつは私の妹ということになっている。年がら年中、猫のコスプレをしている妹だ。 |
青年: |
…よし、にゃーにゃに関しては本人がそれでいいって言ってるから、いいことにしよう。だけど、問題はうちの
姉ちゃんだよ。 |
姉貴: |
あたしがどうかしたの? |
青年: |
どうかしたのじゃない!姉ちゃんは社会人だろう?社会人がそんなふざけたカッコしてたら世間一般の人はどう
思う!? |
姉貴: |
どうって…少なくとも職場では好評よ、これ。 |
青年: |
好評って…どんな職場なんだよ…。 |
姉貴: |
保育園。あんた、あたしが保育士さんだってこと忘れて? |
青年: |
ああ、そうだったあ! |
姉貴: |
子供たちはなついてくれるし、お母さんたちはほめてくれるしいいことづくめよ。 |
博士: |
そー言ってくれると改造した私も鼻が高い。はっはっはっ。 |
青年: |
笑いごとじゃなーい!おいおまえ、姉ちゃんと結婚する気があるんだろう!?親に会う時どう説明する気だ! |
姉貴: |
それについてはもうクリアしてるわよ。改造する前に一回、改造した後に一回会わせてるもん。 |
青年: |
はい!? |
博士: |
お姉さんを改造する前に君たちのご両親にお会いしたのだが、その時に私の職業などを詳しくお話しした。そし
て、「娘さんを人体実験の材料にするかもしれませんがよろしいですか」とたずねたのだが、ご両親は快く了承
してくれたよ。 |
青年: |
こ、快くって…。 |
姉貴: |
で、改造した後にも会わせたんだけど、そしたら父さん、こんなこと言ったわ。 |
博士: |
はーっはっは、なかなかいいじゃないか、君ぃ! |
姉貴: |
そして母さんはこう言った。 |
猫娘: |
にゃーっはっは、かわいい、これかわいいにゃ! |
姉貴: |
というわけで、あたしたちの親の件についてはすでに問題は解決済みなわけよ。 |
青年: |
(頭を抱えて)ああっ、うちの家族でまともなのは俺だけかよ…。 |
猫娘: |
義人ちゃん、にゃにを落ち込んでるんにゃ? |
博士: |
はて、何やら。これまでの話の中に、彼が落ち込むような要素はなかったと思うが…。 |
姉貴: |
そうよねえ。 |
青年: |
てめーら二人とも脳外科手術が必要なんじゃねーか、ええーっ!? |
猫娘: |
ふみぃ!義人ちゃん、怒っちゃダメです!ケンカはいけません! |
姉貴: |
ふーん、あたしの弟ってこんなおもしろいキャラクターだったんだ。 |
青年: |
誰のせいでこんなキャラクターになったと思ってるんだ!? |
博士: |
誰のせいだね? |
青年: |
あんたらのせいだあんたらのーっ!(絶叫した後、体が硬直) |
博士: |
ん?どしたどした? |
猫娘: |
にゃ?どしたどした? |
|
(青年、いきなりぶっ倒れる) |
博士: |
おおっ、酸欠だ酸欠だ! |
猫娘: |
ふみゃあ!酸欠にゃ酸欠にゃ!…博士、どうするにゃ? |
姉貴: |
しばらく安静にしてれば大丈夫よ。ねえ、ところでさあ…。 |
博士: |
何だね? |
姉貴: |
今あたしについてるのは猫耳としっぽだけだけど、今度にゃーにゃみたいに手や足も猫にしてくれない? |
博士: |
ああっ、そのうち改造してあげよう。 |
青年: |
(うめくように)あんた…ら…バカもたいがいに…しとけ…よ…。 |
猫娘: |
義人ちゃん、苦しそうにゃ…。博士、どうにかできにゃいんですか? |
博士: |
まあさっきも言ったように放っておけばそのうち治るだろうが、そんなに心配なら人工呼吸でもするか? |
姉貴: |
人工呼吸って言うと、マウストゥマウス? |
猫娘: |
にゃんですか、それ? |
博士: |
一つ目のマウスは口、二つ目のマウスはネズミという意味だ。つまり、口の中にネズミを放り込むということだ
な。 |
猫娘: |
ふーん、そうにゃの。それじゃにゃーにゃ、ネズミ捕まえてきますにゃ! |
青年: |
(起き上がって)待て待て待てーい! |
姉貴: |
あっ、よみがえった。 |
青年: |
あんたらみたいな連中の前じゃおちおち倒れてもいられないよ! |
博士: |
まあ落ち着け義人くん。我々は兄弟ではないか。 |
青年: |
兄…弟…? |
姉貴: |
そうよねえ、あたしたちが結婚したら、義兄弟になるのよね、あんたら。 |
青年: |
こんなヤツと兄弟…こんなヤツと兄弟…ぐわあ! |
博士: |
そこまでショックを受けるかね…。 |
猫娘: |
ねーねー博士、義人ちゃんは博士の兄弟にゃんですか? |
博士: |
近い将来そうなる予定だ。にゃーにゃは私の妹みたいな物だから、義人くんとおまえも兄弟になるな。 |
猫娘: |
ふーん、そうにゃのかあ。ねーねー、にゃーにゃと義人ちゃん、どっちが年上にゃの? |
博士: |
もちろん義人くんの方が年上だ。だからにゃーにゃは義人くんの義理の妹だな。 |
姉貴: |
よかったわねえ、新しいお兄ちゃんができて。 |
猫娘: |
おにーちゃん…ふみゃあ、おにーちゃんなのだあ! |
青年: |
おにーちゃん…?ぐわっはああ! |
猫娘: |
にゃ?おにーちゃん、どうしたのにゃ? |
青年: |
おにーちゃんおにーちゃんおにーちゃんおにーちゃん…ぐわぁおっ!!(のたうち回る) |
姉貴: |
ちょっと義人、どうしちゃったのよ? |
博士: |
ふーむ、どうやら理性と本能が戦っているようだな。 |
姉貴: |
えっ?どういうこと? |
博士: |
統計によれば全男性の83%は、妹でない女の子に「お兄ちゃん」と呼ばれたいという願望を潜在的に持ってい
るのだ。 |
姉貴: |
ふーん、そうなんだ。 |
博士: |
しかもそれがこんなかわいい猫耳娘なのだ、心が揺らがないはずがない。 |
青年: |
確かににゃーにゃはかわいいが、こんな連中と家族なんて…ああっ…。(頭を抱えて悩む) |
博士: |
(何かを思いついて)義人くん、このジレンマを解決する方法があるのだが…。 |
青年: |
何だそれは?いい手があるなら頼むよ。 |
博士: |
だが、果たして君が了承するかどうか…。 |
青年: |
いいからやれよ。こんなくだらないことで悩むのはまっぴらだ。 |
博士: |
そうか…。ならば言おう。この問題の解決策は、君自身が猫耳青年となることだ! |
青年: |
…は? |
博士: |
やれい!(指を鳴らす。姉貴、青年をはがいじめにする) |
青年: |
ぎゃああ!何をするんじゃあっ!! |
姉貴: |
ほほほ、これであんたもあたしたちの同類よ。 |
青年: |
ちょっと待てーい!何考えてるんだあんた!?(暴れる) |
姉貴: |
いたたたた!ちょっと義人、姉に向かって何てことするのよ!! |
青年: |
あんたなんか姉ちゃんじゃない!! |
博士: |
むう、これでは逃げられてしまうな…。よしにゃーにゃ、おまえがいつも私にやっているアレを彼にやってあげ
なさい。 |
猫娘: |
はーい。ふみぃ、おにーちゃーん♪ |
青年: |
こら、抱きつくなにゃーにゃ!姉貴も放せー!!(捕まったまま奥へ。その後ニヤリと笑って博士も奥へ) |
|
(少しの間) |
博士: |
では、手術開始!! |
青年: |
ぎぃぃぃぃやぁぁぁぁっ!! |
三人: |
にゃーっはっはっはっはっはっは!!(オチの音楽の後に暗転、END) |
|
<後書き>
このオチもだんだん飽きてきたな…。 |
|