無農薬についてのご質問は沢山いただいております。特に小さいお子さんをお持ちのご家庭でしたらなおさら関心がある話題ですよね。
まず、皆さん農薬・無農薬について勘違いしている点もあるみたいなので説明させてください。
[無農薬=美味しいお米] そして [農薬を使ったお米=不味いお米] というようなイメージを抱いている方もいらっしゃるかと思いますが、農薬の使用・不使用とお米の食味には直接の密接な関係はありません。
食の安全を考えて熱心に無農薬栽培に取り組んでいらっしゃる生産者が日本全国に沢山いますが、皆さん農薬を使わないにもかかわらず美味しいお米を生産できる環境を整える努力をしているのです。
農薬を使ったほうがはるかに簡単に美味しいお米を安定して生産できるのです。農薬は文字通り「薬」です。自然界に当たり前に存在する病気や病害虫から稲を守ってくれているのです。もし使わなかったら病気・病害虫の被害にあい収量も減少し必然的に品質も悪くなって当然なのです。
稲を人間に置き換えれば簡単に理解できるのではないでしょうか?
人は必ず病気になりますよね?生活環境や栄養状態にもよりますが、医療・薬の力に頼ることによって我々日本人の平均寿命が延びたということは否定できない事実だと思います。
余談になりますが、食糧事情・教育の不足・政治の不安定等要因は様々ですが、今この時間でも世界では乳児死亡率の非常に高い国・地域が沢山あって、医療・薬が一番の解決方法だというのも事実ではないでしょうか?
残留農薬の問題が取り上げられますが、農薬を使ったお米を長期にわたって摂取して安全か危険か?と問われれば、農薬は用法・用量を守って使えば充分安全であるとお答えします。
日本では農薬取締法により農水省に登録された農薬のみ販売・使用が認められており、その登録・安全使用の基準は世界的水準からみてとても厳しいものです。もし食べた人が中毒あるいは発ガンするような薬だったとしたならそれを使用していた農家の人たちは残留農薬の影響の何百万倍もの被害を被っているはずです。
農家の人が一番農薬の危険性を理解しているのではないでしょうか?
私も実際に耳にしますが「農薬を使っていると気分が悪くなって2時間でやめた」「この農薬は自分には合わない・・・頭が痛くなる」最近では「低農薬」という言葉が流行っていますが、農薬の使用を減らすことは取り立てて声を大きくして言うようなことではなく誰でも当たり前にやっていることだそうです。
私は生産者と話をする機会があると日頃不思議に思っていることなど質問しておりますが、よく笑われております。「お兄ちゃん、そんなこと言っていたら何も食べられないよ!空気吸って肺ガンで死ぬのを心配しているようなもんだよ〜 私らなんかとっくにガンになって死んでいるよ〜 そんな心配する人は外国から輸入した物なんか食べちゃダメだよ!使っている薬が全然違うんだから、野菜見れば分かるでしょう。」
確かにそのとおりかもしれません。現在の日本の食糧自給率は約40%ぐらいです。先進国の中でもずば抜けて低い値になっております。国民皆必然的に6割ぐらいは外国から輸入されたものを食物として摂取している計算になります。
食生活によってはそれ以上でしょう。(余談ですが私がよく行くラーメン屋さんのスープの寸胴にも外国産の野菜が入っています。コストを考えると国内産は使えないそうです。オマケに私はニンニクが大好きですのでおろしたニンニクをトッピングして食べます・・・もちろん中国産のニンニクが使われています(笑))
輸入食料のポストハーベスト(収穫後保存のための農薬)の問題もよく取り上げられますが、私にも思い当たることがありますのでご報告させてください。
10年以上前の話になりますが、平成の大凶作の時にお米が緊急輸入されました。我々米屋はその緊急輸入されたお米を必ず買わなければなりませんでした。(国内産との抱き合せ販売にあたります、国内産○○トンにつき外米○○トンという具合です。3:7でした)
自社トラックで大手運送会社の民間倉庫にその外米を引取りに行った時の話です。
倉庫の中には外米が山積みされておりましたが中に入った瞬間に初めて嗅ぐ変な臭いがしていました。尋ねてみると「外米の(麻袋の)匂い・・・中国米独特の臭いだよ・・・すごいよ、虫も寄り付かない、ねずみにも食われない、強い薬なんだろうね。」とのことでした。
当店でも夏場にはお客様から「虫の卵がある」「お米に虫がわいた」とクレームをいただくことがありますが、そういう場合は日本のお米は安全なのだと思っていただければと思います。そのお米を精米して外側の糠の部分を取り除き、水で研ぎ洗いして、なおかつ加熱調理するのですからお米に残留農薬の影響はないといっても良いのではないでしょうか?
無農薬栽培に熱心に取り組んでいる人、そして高いコストを負担してそれを支持する人。皆様方の考え方を否定するつもりは全くありません。耳をかたむけていただけるのならばと思ってお話しますが、全てのお米(農作物)に対して無農薬で栽培するとしたなら今現在の収量そして価格を維持することは不可能です。
私は日本のお米を食べて残留農薬の影響により健康に被害が出ることは考えられないと信じています。
私の友人に国立大学の農学部を出てJAS認定の無農薬有機生産者がおりまして,彼から聞いた話です。
無農薬米がアトピーに良いかどうかの実験をした教授がいたそうです。
Aグループには平野(川の下流)で取れた無農薬米
Bグループには山間地(川の上流)で取れた通常栽培米
結果はBグループにより改善が見られたそうです。
農薬も化学物質の一つにすぎないと考えればぜんぜん不自然な結果ではありません。我々を取り巻く環境(大気中あるいは水)にはいろいろな化学物質が含まれていてその影響を被っているのでしょう。農薬の使用をゼロにしても空気や水はどうしようもないのです。農薬だけに特別に神経質になる必要はないのでは?と思います。
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