その13
あれは、原宿スターが、八角館ビルから、オンデンビルに、引っ越して、まもなくの、秋の終りの日曜日だった。
朝、早めに出勤して、受付のH君が、開けてくれて、スターに、入りました。私が、入店、2年目位だったかな?
店内には、お化粧直しをしている弦先生が、座っていました。H君は、外へ、掃除に出てしまいました。
「おはよう、ミミちゃん。」目は、鏡を、見ている。 「おはよよう、ございます。」
私、もう、感情を、抑える事が、出来なくて、「弦先生、聞いて頂きたい事が、あります。」って、思わず、
言ってしまった。
「何?ミミちゃん?」 お化粧直しの、手を、止めて、私を、みた。
「私、ここ5ヶ月程、○○さんから、(スターの先輩占い師)辛く当たられていて、耐えられません。」
「ミミちゃん・・・」 もう、すぐに、弦先生の、眼に涙が、溢れ、慌てて化粧コットンで、目頭を、押さえていた。
「聞くわ、話して。」 ゆっくりと、お化粧直しを、しながら、聞いてくれました。
当時、私が、入店したこの頃、スターには、いろんな、占い師さん達が、いました。
その中でも、私に辛く当っていた先輩、Aさんと、しましょうか・・・
そのAさんは、鑑定の時も、お客様に、対して、上から目線で、そして説教口調で、みてました。
私には、苦手なタイプの方でしたねぇ。 もちろん、Aさんに、みてもらって、しょんぼり帰ったり、
それこそ、苦情を言って帰るお客様を、時々、見かける事も、有りました。
受付のH君が、謝っている姿を、思い出します。
私も、2年目となると、そこそこ、お客様を、取る事が、出来るように、なりました。
弦先生からも、
「この調子よ。」っと、励まされたりもしました。
この頃、私は、JR大崎駅周辺に、住んでいたので、
スターの往き帰りは、山手線・原宿駅を、
利用していました。店から、駅までは、ほぼ一本道。
5月のある日曜日、もうすぐ、駅っという所で、Aさんが、
待っていたのです。
「ミミちゃん、話が有るんだけど。」
何?何? Aさんと、仲良くなるチャンス?
Aさんと、私、2人で、すぐ近くの喫茶店に、行きました。
「まっ、座って」っと、Aさん。「はい。」座りました。
「ミミちゃん、あなたの態度、頭にきてんだけど!!!」
いきなり、普通の声の音量だったけど、
怒鳴ってきました。
えー、私、何したっていうんですか?
怖くって、意外な事で、返答出来ず、
ただ、ウェイトレスさんが、運んできてくれた、
紅茶のカップを、触っていました。
そんな事が、毎週日曜日、仕事帰りに有り、滅入っていました。
Aさんに、言われた事ねー・・・
・今日、あなたが、みた、あのお客さん、前に、私、みた人なのよ。横取りしないでよ。
・鑑定中、笑い過ぎるのよ。うるさくて!
・私の事、少しは、見習いなさいよ。
・今日、私より早く、休憩、入ったでしょ。
・今、辞めれば、スターにとって、痛くもかゆくもないから、考えてよ。
等など、毎回、30分以上、ぶつけられましたね。
喫茶店での、お茶代は、割り勘。
原宿駅に、歩いて着く頃には、気持ちは、ズタズタ。山手線に、乗ったとたんに、涙が、こぼれました。
それが、約5ヶ月、毎週有りました。
とうとう、9月の最終日曜日、辛くって、弦先生に、チクっちゃったんです。今、書いた事を、
弦先生に、話しました。
弦先生は、「ふんふん」っと、聞いてくれました。
お化粧が、仕上がった時に、「ミミちゃん、気にする事ないわよ。」って、さりげなく言って下さいました。
私は、言ってすっきりしました。これで、いいわと・・・
もちろん、この日も、Aさんは、出勤しました。店は、一日中、忙しかったです。
そして、閉店時間の8時を、迎えました。 お店には、弦先生、Aさん、私、そして、台所を片付けていたH君。
帰り仕度の、Aさんに、弦先生が、突然、告げたのです。
「もう、次から、来ないでいいわ。つまり、もう、いいって事よ。H君、Aの、お給料清算して。」っと・・・
その場は、凍りつきました。5秒程、無音状態でした。
告げられたAさんの顔は、覚えていません。 見れませんでした。
我に帰り、私も、帰りの仕度を、しました。
「お疲れ様でした。先に、失礼します。おやすみなさい。」 一礼して、ドアを、開けました。
そして、閉めようとした時、「ミミちゃん、おやすみー☆」っと、弦先生の声が、聞こえました。
「おやすみなさい。」っと、閉めたドアの向こうで、私は、直立ちしながら、挨拶していました。
何か、大変な事が、起こった事に、ドキドキして、山手線に乗ったとたん、心臓が、ドキドキして、
どう、部屋に帰ったか、覚えていません。 懐かしいなー。
去年、亡くなって、2周忌。生前、弦先生と、親交の深かった方から、封書で、手紙を、もらいました。
その文面に、「弦さんは、あまり、占い師さん達を、褒める事は、なかったですよ。むしろ、批判ばっかりしていました。
ミミさんの事は、逆に、楽しい子なのよって、プラスに、言っていましたよ。しかし、インドに、行き過ぎだと、
心配していました。」っと、書いてありました。私は、この、お手紙を、頂いて、本当に、泣きたくなりました。
いろんな事を、思い出して・・・
すると、あの世から、弦先生が、「泣かないで、ミミちゃん!」って、声が、聞こえるのです。
いつ、泣いていいんですか?
添付した写真は、弦エニシの、かっこいい写真、コレクションです。
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